※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

幽霊も、怪物も、覆面男も出てこないのに、背筋が凍るほどの恐怖体験ができるホラー映画『エスター』。

なぜ怖いのか?

一言でいうと、主要キャラであるエスターが子供だからである。

子供であるエスターが、無邪気に、そして計算して殺意を抱く過程が怖いのだ。

そして、犯行の準備も周到で、義理の妹を共犯者に仕立てる巧妙さなど、こんな子供リアリティがないと思わせるのだが、実はすべてが伏線なのである。

なぜ、これほどまでに犯行がスムーズにいくのか?

エスターは体は子供だが、実は33歳だからである。

「下垂体機能不全」という病気で、ホルモンバランスの関係で体が9歳のまま成長しなくなっていたのだ。

そして精神はというと、知能が高く、猟奇的で独占欲が強いという設定だ。

体が9歳のままだったので、恋愛もできず、それがコンプレックスとなりあのような性格になった描写はある。

ラストで里親である父ジョンに愛を求めるのは鳥肌もの。

前半でジョンに近づく女性に嫉妬したり、母を悪者にしたり、すべてが繋がる瞬間は血を使わない究極のホラー演出である。

また、これまでも引き取られた家のパパに恋をしたり、それが叶わないと放火したり、かなり猟奇的な性格なのだ。

血がでるようなホラーの基本演出は多少あるが、そういった事よりも、『エスター』というキャラの内面の恐怖を描いている。

その様な視点から「血を最小限に抑えて恐怖を最大限に表現したホラー映画」といっても過言ではないと思われる。

 

また、本作『エスター』の様なホラー映画が好きな方は『ゲットアウト』もおすすめだ。

映画「ゲットアウト」の感想・ネタバレ(83点)ホラーが苦手でも大丈夫?怖い?リアルな恐怖が体験できる作品

 

そして、ホラー映画の金字塔『シャイニング』も外せない。

映画「シャイニング」の感想・ネタバレ(85点)キューブリックのホラー×アートという境地

 

 

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入れ歯とお風呂について

ラストでジョンを誘惑しようとするエスター。

しかし、当然断られてしまう。

これに深く傷つき泣きじゃくるのだ。

化粧がどんどん落ちていくのだが、なんと顔が変わっているのである。

それは「おばさん」の様な、前半と比べると明らかに老けているのだ。

つまり、今までの顔は化粧で作っていたのである。

だからこそ、お風呂に鍵をかけたり、素顔を誰にもみられないようにしていたのだ。

また、エスターは拘束されていた過去があり、その時の傷が首と手首にあり、それをいつも隠している。

そして、化粧の他にも入れ歯が落ちるシーンがある。

そう、エスターは入れ歯だったのだ。

なぜなら、歯医者にいくと年齢がバレてしまうので、治療もできず入れ歯で回避していたのだ。

エスターが養女となったはじめの頃、執拗に肉を細かく切って食べるシーンがあるが、この伏線だったわけである。

 

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マックスが可哀想で観てられない

里親であるケイト・コールマン(ヴェラ・ファーミガ)と、ジョン・コールマン(ピーター・サースガード)の実娘であるマックス。

マックスは生まれつき難聴で耳がほとんど聞こえない。

なので、親とはいつも手話で会話を行っている。

まだ幼く可愛いマックスを、とことん利用するエスター。

もし従わなければ「ママを殺す」と脅す。

幼いマックスに対して、愛する者を利用して犯行を繰り返すのである。

鬼畜である。

ただ、こういった憎むシーンがないと、エスターに同情してしまう可能性があるので、やはりこういった鬼畜な性格を強調する必要もあったのだと思われる。

 

まとめ

ホラー映画としてバイオレンスなシーンは少ない、しかし、エスターというキャラの内面の恐怖を描いた作品である。

エスターが夜中に家族を監視していたり、見張っている感じにおもわずゾクゾクしてしまう。

また、里親である母を虐待に陥れる為、自分の腕を万力で折ったりサイコ的な演出も抜け目がない。

ご都合主義的な展開もあるが、エスターのキャラ自体はリアリティがあって本当に怖い。

エスターを演じたイザベルファーマンの今後が楽しみだ。

 

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