※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
伊坂幸太郎の大ヒットサスペンス小説『重力ピエロ』の映画化作品である。
強姦・放火など、かなり重いテーマを扱っているが映画版は恐らくあえて緊張感は少なめの演出にしている。
よって、サスペンスのポイントとなる「ハラハラ・ドキドキ感」は少ない。結構淡々と進んでいくのでテーマは重いが、進行はゆるやかなのである。
見どころは連続放火の犯人捜しなのだが、前半で犯人や動機なども見えてくる設計となっている。
主人公は冴えない大学生の長男である泉水(加勢亮)、そしてイケメンでモテモテだが女性に興味がない次男の春(岡田将生)。
この2人が事件の謎に迫りながら、お互いの過去、家族について向き合う物語である。
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ミステリー要素
放火の現場近くには必ずグラフィティアートが描かれており、その内容からDNAの二重螺旋構造を表しているという手掛かりを掴む。
この謎解き要素は見応えがある。
グラフィティアートや、いたずら書きなどを消す仕事をしている弟の春は、グラフィティアートと放火の関連性に気づくのである。
それもそのはず、春がやっているからである。
自分でグラフィティアートを書き、自分でそれを消し、そして付近で放火をする。
なぜ、こんなことをするのか?
徐々に過去のシーンが始まっていく。
春の出生
春がまだ生まれる前、主人公家族が住む付近には連続強姦魔が潜んでいた。
そんな中、主人公家族の母である奥野梨江子(鈴木京香)がその被害にあってしまうのだ。
そして生まれたのが、春だ。
父は本当の息子のように育て、兄である泉水もその事実は知らずに育った。
しかし、噂はすぐに広がってしまうもの、引っ越した先でも噂になってしまうのである。
そして、兄弟も大きくなったある時、母は交通事故にあいこの世から去ってしまう。
こういった事も重なり、子供達も大きくなったことを考え、父(小日向文世)は兄弟二人に真実を話すのであった。
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放火場所は犯行現場
春が放火していた場所は、強姦犯の犯行現場であった。
春にとっは「浄化」の意味、そして、刑期を終えた犯人である葛城由紀夫(渡部篤郎)に対するメッセージであったのだ。
犯行現場の新聞記事を葛城に送り付け、自分が強姦された時に生まれた子供だと打ち明けるのであった。
そして、それは以前、家族で住んでいた場所なのだ。
独自で調査をしていた兄の泉水は、春の目的を悟り、間一髪で春のもとへ駆けつけるのであった。
重力に縛られないピエロ
強姦犯によって生まれた運命という重力。
この重力は変えることができるのか?
春は自分の力でそれを変えようとした。
なぜなら、小さい頃に家族でみたサーカスを覚えていたからである。
サーカスの中でピエロは重力を無効化して、皆に笑顔を与えている。
「DNAの二重螺旋構造」そして冒頭とラストで演出される「春が二階から落ちてきた」というシーン。
そして2人の兄弟。
この運命に対する作者の思いをタイトルに見事に表現されていて、思わずうなってしまう作品だ。
夏子さん役の吉高由里子がいい感じ
学生時代、モテモテだった春。
ある日、昔撮った写真を眺めていると、春の背景には必ず一人の女性が写っていた。
それが夏子さんである。
春を追いかけるいるから夏子というわけだ。
そんな夏子、学生時代は申し訳ないが美人ではない。
しかし、大人になって登場するのが整形した夏子さんである。
そして、その役が吉高由里子なのだが、中々よい味を出している。
春が自らグラフィティアートを書き、そして消し、放火をするというサイコ的な流れを兄に伝える役なのである。
春の事は諦めたようだが、大人になった夏子さんであればお似合いではないだろうか?(笑)
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