※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

『人生スイッチ』というタイトルとポスターのイメージから、かなり興味をそそられるプロモーションである。

観る前からタイトルやポスターで色々想像させてくれる作品は個人的に大好きだ(笑)

そして、いざ観てみるといきなり意表をつかれる。

それはオムニバス風の展開ということだ。

一話目として「おかえし」という話がはじまる。

舞台は飛行機の中。

偶然、隣に座った乗客同士の会話から「ガブリエル・パステルナーク」という人物に全員が係っていることがわかるのであった。

ある者は、昔パステルナークと付き合っていたがフッた者。

ある者は、パステルナークの作曲した楽曲を評論した者。

ある者は、パステルナークの精神科医。

それぞれがパステルナークの恨みを買っているのであった。

しかも、なんとCAまでパステルナークと関わっていた。

そして、そのCAから驚愕の事実が伝えらえる。

なんと、その飛行機を運転しているのがパステルナークだというのだ。

ここから、パステルナークの説得などが始まるサスペンス的な展開になるかと思いきや、その後墜落し話は終わる。

この様な短編が繰り替えされるのである。

また、本作の裏側には戦争に対する強烈なメタファーが隠されており、ただの娯楽作品として観てしまっては非常にもったいない内容である。

 

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それぞれの話は繋がっていない。

それぞれの話が最後につながるのか?と思いきや、まったく関係なかった(笑)

パルプフィクションのように、それぞれの短編が繋がっていくことを期待したのだが、この作品はそれぞれ独立していて正解だと思う。

無理につなげようとすれば、どこかに矛盾が生じてしまうし、それぞれの話が見事に完結しているので結構爽快なのだ。

 

怒りと復讐が生み出す混沌

それぞれ話は独立しているが、テーマは一貫している。

怒りと復讐」である。

自分の身が亡ぶことを知っているのに、人間は復讐を選ぶ生き物なのだ。

しかし、この作品の凄いところはラストの「ハッピーウエディング」だ。

ここまでの物語で、怒りと復讐が生み出すのは結局身の破滅というのを念入りに描いている。

しかし、ハッピーウエディングは一周回って混沌としたハッピーエンドになってしまうのだ。

一度破滅的な展開になるのだが、ぐちゃぐちゃになりながら新たな秩序が生まれるというどんでん返し。

このラストシーンはセンスの塊だ。

 

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全話の簡単なあらすじ

1話目「おかえし

恨みのある人物を全員飛行機に乗せ、パイロットとして墜落させて復讐をする話。

シンプルに「復讐」がテーマである。戦争の根本的な原因を描いている。

 

2話目「おもてなし

カフェのウエイトレスとして働く主人公の前に、家族を不幸にした男が現れる。

それを女店主に話すと急にサイコ的な本性をみせるようになるという話。

誰かの復讐に対して、直接的には関係ない第三者(同盟国)が参加するという戦争の皮肉を描いている。

 

3話目「パンク

新車を手に入れて道を爽快に走る主人公。

前をトロトロ走る車に対して暴言を浴びせる。

すると、その先で運悪くパンクしてしまうのであった。

あとは想像する通りである(笑)

しかし、この物語はかなり奥が深く、復讐に対する復讐というのが根本的なテーマとなっている。

戦争による報復の連鎖の空しさがよく表現されている。

結局はお互いが無残な姿で発見されるのである。

 

4話目「ヒーローになるために

この話の主人公は爆破技師。これである程度のオチがわかってしまう(笑)

物語は「駐車違反」で何度もレッカー移動させられるイライラを描く。

これは車を運転する人が経験する「あるある」でもある。

道路交通法に対して、頭にくることがあった人は多いと思う。

ほとんどは自分が悪いのだが、やはり誰かのせいにしたくなるものだ。

そのフラストレーションにより、爆破につながるのである。

しかし、それは同じような境遇を経験した人にとって、まさにヒーロー的な行動だったのだ。

独善的な思考がテロに繋がるというオチとなっている。自分は正義だと思ってどの国も戦争をしているという皮肉。

 

5話目「愚息

成功を手に入れた一家を襲う息子が起こした人身事故。

金の力で使用人に罪を擦り付けようとする父。

しかし、弁護士などかかわる人物の全員が金をむしり取ろうとするのであった。

そんな父の怒りがテーマかと思いきや、実は事故被害者のパートナーの怒りによって幕が閉じる物語であった。

権力者(お偉いさん)と、使用人(軍人)の関係を見事に描いた物語であり、まったく罪のない使用人が愚息の代わりに戦死する強烈なメタとなっている。

また、お偉いさん同士がそれぞれ自分の利益の確保に向かう過程も痛烈だ。

 

6話目「ハッピーウエディング

結婚式の当日、花嫁は偶然に花婿の浮気相手を知ってしまう。

花嫁にとって、その浮気相手を式に呼んだことや、ほとんどの友達がそれを知っていたことに怒りが収まらない。

式を抜け出し、慰められた調理人と関係を持ってしまう。

そこからは狂気の展開となり、式はめちゃくちゃになってしまう。

花婿も悪いが、花嫁の性格もかなりのサイコである。

めちゃくちゃとなった会場であったが、なんと一周回って再度愛し合うというオチ。

ケーキをぐちゃぐちゃにしながら、みんなの見ている前で愛し合うラストシーンはカオスである。

例えば壮絶な戦争を繰り広げたアメリカと日本。あれだけの犠牲がお互いあったにもかかわらず今では友好国となっている。その歴史をポジティブにそして皮肉として絶妙なバランスで表現している。(他の客(国)はラストしらけている)

 

以上が、それぞれの物語であるが、ボクはやはりラストの「ハッピーウエディング」が面白いと思う。

最後にきて、これまでの話しが伏線であったとわかるラストシーンが最高だ。

 

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