※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
日本では2007年に公開された『アイ・アム・レジェンド』。
当時のCMやプロモーションは今でもよく覚えている。
地球で一人きりになってしまったウィルスミスが、都会でサバイバルをしながら生き延びるような演出のCMであった。
特に斬新なアイディアではないかもしれないが、誰もいない都会を見事に映像化しており、非常に興味をそそられた。
「なぜ一人になってしまったのか?」
「誰もいない都会でどんなサバイバルをするのか?」
こういったフックによって、映画館まで足を運んだ方も多いのではないだろうか?
そして意表を突く内容に驚愕するのである・・・
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CMではサバイバル風だったが・・・
では、ここからネタバレとなる。
まず、都会でのサバイバル映画だと気楽な気持ちで観ていると、あのシーンにやられてしまう。
そう、愛犬を追って暗闇のビルに入ると、多数のゾンビが「ハァハァ」しながら立っているシーンだ。
これはぶっ飛ぶ!
CMでは一人でゴルフをしたりサバイバルを楽しんでいるような印象を与え、あの超不気味なゾンビ集団によって震え上がらせるのだ。
これは本当に見事なプロモーションだ。
ホラー映画なんてまったく予想していなかった状態で、あのシーンを最初に見せるのは相当なセンスである。
ただし、当然ここで脱落してしまう人もいるであろう。
「なんだ、ゾンビ映画か・・・」と。
確かに映画館で公開された通常版の場合、あのエンディングは腑に落ちない。
そして伏線も回収されていないので、かなり違和感のあるラストとなっている。
サバイバル→ゾンビの意表を突く展開は素晴らしいが、物語としてはそれほど魅力的ではない。
しかし、本来のラストであった「別エンディング版」を観ると、本作の面白さが180度変わる。
マネキンの不気味さと愛犬の演技
「ハァハァ」言いながら突っ立っているゾンビも不気味だが、マネキンもかなり不気味だ。
中盤ではCDショップにいたマネキンが、別の場所に置いてあり、ウィルスミスは混乱してしまう。
このシーンもかなりホラーである。
ゾンビが罠を仕掛けたのだ。
知能があるゾンビほど怖いものはない(笑)
誰もいない都会において、このマネキンの不気味さは良いスパイスとなっている。
そして、なんといっても愛犬である。
誰もいない都会において、唯一のパートナーが犬なのだ。
この愛犬がいることで、ウィルスミスはギリギリ正気を保っていられるのだ。
また、犬の演技も素晴らしく、様々シーンで犬とは思えない演技をしている。
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別エンディング版と通常版の違い
では、別エンディング版と通常版の違いは何なのか?
まず、映画館で公開された通常の方から先に説明する。
通常版では、ラストにゾンビを治す血清のヒントがわかり、それをヒロインに渡して、ウィルスミスは自爆する。
これにより、人類が救われるので「アイ・アム・レジェンド」となるわけだ。
つまり、自分の命を犠牲にし、かつ、血清をも開発した伝説の男という感じである。
これに対して、別エンディング版は180度変わってくる。
ラストにゾンビが襲ってくる理由は、ウィルスミスが実験の為に捕獲したゾンビが原因であった。
襲いに来たゾンビのリーダーは、捕獲されてしまった恋人らしきゾンビを救いに来ただけだったのである。
ウィルスミスとしては、人類を救うべく、一人で血清の研究をしていたわけである。
その為、何十体ものゾンビを捕獲し実験していたのだ。
これは人間の目線でみれば、人類を救う為に頑張っている、と映る。
しかし、ゾンビからみたら仲間を実験台にする危険なモンスターなのである。
つまり、ゾンビからは皮肉として「アイ・アム・レジェンド」となるわけだ。
ウィルスミスは、ゾンビは知能や感情もなく、ただ生きていると誤解をしていた。
しかし、実際はウィルスミスに対して罠を仕掛けたり、恋人のゾンビを救いに来たり、知能や感情を持ち合わせているのだ。
通常版ではウィルスミスはゾンビの罠にかかるのだが、ラストまでゾンビに知能があることが表現されないので、その伏線が回収できていないのだ。
「えっ?結局、誰がウィルスミスに罠を仕掛けたの?だってゾンビには知能ないんでしょ?」ってことになってしまう。
しかし、別エンディング版では恋人ゾンビを救いに来たことや、ウィルスミスが恋人ゾンビを解放させることで、ゾンビに知能や感情があることがわかる。
そして、これにより「もしかして、ゾンビって人類の進化した姿では?」という可能性も出てくるのである。
つまり、主人公であるウィルスミスが行っていることは、新しい人類の邪魔をしているだけなのかもしれないのだ。
この「どんでん返し」によって、作品の奥行がかなり変わってくる。
また、通常版では最後に血清によって「人類を治す」という表現で終わる。
しかし、別エンディング版では、人類を治すのではなく「残った少ない人類で一緒に生きていきましょう」という表現で終わるのだ。
つまり、ゾンビのアイデンティティを認めているのである。
確かに「感染」により、どんどん広がっていったゾンビ化現象であるが、「被害」というものはない。
「紫外線に弱い」ということ以外にデメリットはなく、3年もの間、食糧もなくしっかり生き抜いている。
つまりエネルギーを摂取しなくても生きている体に進化しているのだ。
一言でいうと不老不死である。
しかも、ちゃんと知能や感情もある。
こうして観ると、ウィルスミスがただ独善的な行動をしていただけであり、非常に深いテーマなのである。
以上のことから、通常版よりも別エンディング版の方が絶対に楽しめると思う。
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