※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

スピルバーグが構想10年という噂の「イーグルアイ」。

構想10年は言い過ぎかもしれないが、この作品が『2001年宇宙の旅』にインスパイアされているのは間違いないだろう。

『2001年宇宙の旅』に登場するコンピューターシステムである『ハル』がモチーフとなっている。

『ハル』は人工知能を持って宇宙船を制御する高性能コンピュータだ。

しかし、テクノロジーの欠点である『融通の利かなさ』によって、反乱を起こしてしまうのだ。

今回のイーグルアイは、この『ハル』の反乱を非常にわかりやすく丁寧に描いたような作品である。

スピルバーグ自身も『2001年宇宙の旅』にはかなり影響されたと語っているし、『ハル』を意識しているのは疑いようのない事実だ。

 

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融通の利くコンピュータは作れるのか?

高い性能の人工知能をもったコンピュータも白・黒しか判断できなければ、それほど恐ろしいものはない。

スピルバーグがテクノロジーに警笛を鳴らしているのはこの点ではないか?

高性能だが両極端。

善い・悪い
白・黒
0・1

こういった判断しか出来ない限り、コンピュータに判断をさせるのはかなり危ない。

このイーグルアイも、冒頭の判断において、自分の判断に従わなかった人間を抹殺しようと企むのだ。

でも、それはコンピュータからみたら『正義』なのである。

悪いことをしているわけではなく、国家を守る為の『ギロチン作戦』だったのだ。

それは融通の利かなさが招いたことであり、コンピュータはプログラムの通りに仕事をしているだけなのである。

 

前半100点、後半60点

犯人がわかる前の前半部分。

犯人がわかった後の後半部分。

 

前半、後半で評価がかなり変わる。

前半は100点。

後半は60点。

 

まず前半部分。

複数のストーリーが平行してスタートし、一瞬も目が離せないサスペンス的な展開は素晴らしい。

主人公たちは、なぜ謎の女性に無理難題を押し付けられるのか?

また、電光掲示板や信号をコントロールしたり、どんな巨大な組織が動いているのか?どんどん引き込まれてしまう。

莫大な資金力や技術力がある新しいテログループ?

正体がなかなかみえてこない謎の組織に対して、少ないヒントを思い出しながら、流れるようなストーリーと同時に考えていくしかない。

 

中盤に大規模なカーチェイスが展開される。

通常カーチェイスをみると手に汗握るアクションにどっと疲れるが、この映画に限ってカーチェイスは息抜きだ。

今までの展開をじっくり考える為に、頭を使わなくてもよいカーチェイスで考えをまとめていく。

だからカーチェイスのシーンになると思考から解放され、休めるのである。

ただ、このカーチェイスシーンも凄まじいので、結局疲れる(笑)

 

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後半は矛盾だからけ

結果に対して、瞬時に計算し、最も効率的な答えを導く、そんなリアルタイム感を演出したかったのだと思うが、結構ツッコミ所が満載で後半は失速してしまう。

レイチェルの役割もかなり強引だ。

基本的に主人公のジェリーを消す役と、爆弾を加工したダイヤを身につけ、大統領や側近を含め爆発させることがアリアの目的なのだが、もっとスマートの方法はかなりある。

また、アリアの第一の目的はジェリーの声だったのだが、そんなの『音声フィアル』としてデータを転送させれば済むことだ。

全てが、かなりアナログなのである。

演出的にアナログ的な要素をあえて取り入れたのだと思うが、後半は矛盾点の多さに面白さが失速していってしまった。

強心剤が入っているブリーフケース、なぜ護衛が付いているのか?新薬だから?しかも、タイマー付き?

そもそもブリーフケースはオンラインなのか?アリアがタイマーをコントロールできるのか?

デジタル機械であれば、無線を受信しなくても操れる?

それなら、もっと効率的なギロチン作戦が執行できたであろう・・・

レイチェルに対しては、息子を人質に取れるほど、感情はインプットされているアリア。

人の『弱み』も学習しているコンピュータ。これほど恐ろしいものはないという、スピルバーグの教えか?

 

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