※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

こういったスパイ系の映画は、やはり「どんでん返し」を監督は使いたくなるのか?

本作『ソルト』は、「どんでん返し」を狙い過ぎて少し「無理」が出てくる。

アメリカのCIA捜査官であるイヴリン・ソルト(アンジェリーナ・ジョリー)。

冒頭では北朝鮮へ工作員として乗り込み、掴まり拷問されるシーンから始まる。

めちゃくちゃ拷問されるのだが、ソルトは決して秘密を話さないのである。

この冒頭シーンで、ソルトのアメリカに対する「愛国心」やCIAへの「忠誠」が表現されている。

工作員として捕まったら、CIAは見捨てるという契約にも関わらず話さないのである。

この様に、CIAとして優秀なソルトがどんな活躍をするのか?どんどん引き込まれていくのである。

 

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あらすじと感想

(↑冒頭の尋問シーンで鏡に映る2人が作品の多重構造を表現しているようである)

北朝鮮で捕まったソルトであったが、夫であるマイク(アウグスト・ディール)の尽力によって助け出すことに成功する。

マイクは蜘蛛の権威であり、ソルトが北朝鮮に潜り込めたのもマイクの人脈を利用してのことだった。

マイクとの落ち着いた生活を望むようになったソルトは、現場から離れデスクワークをCIAに希望するようになる。

そんな時、CIAにロシアから亡命してきたオルロフという男が出頭する。

オルロフが言うには、ロシア(旧ソ連)で訓練を受けたスパイがアメリカで事件を起こすという。

それは、アメリカ副大統領の葬儀に出席予定のロシア大統領を暗殺する計画なのだ。

そして、その暗殺を行うロシアで訓練を受けた人物の名前は「イヴリン・ソルト」。

つまり、ソルトが実はロシアのスパイだというのだ。

CIAは脳波からオルロフが真実を言っていると判断する。

そして、ソルトは当然尋問を受ける。

尋問の中でCIA防諜部のピーボディ(キウェテル・イジョフォー)は、ソルトが2重スパイであることを疑う。

そんな中、ソルトは夫に電話をするが繋がらない。

常に夫を気にしているのだ。

一旦、オルロフを待機させようとするが、途中のエレベーターでCIAを振り切り逃走する。

その隙をみてソルトも逃走するのである。

この辺から視聴者はポカーンとする時間が続く。

なぜなら、ソルトは事情を説明すればいいことだし、どちらのスパイにせよ、もっとスマートに切り抜ける方法はいくらでもあるからである。

 

前半は感情移入をさせない設定

前半はソルトが何を考えているのか?あえて解り難くしている。

なぜCIAから逃げるのか?

なぜロシア大統領を撃ったのか?

ソルトを止めようとする者は、全員倒される。

大義名分が表現されないので、前半はなかなか主人公に感情移入できない。

「単なるスパイとして悪党に洗脳された話か?」と思うのだ。

しかし、その「動機」がわかった瞬間、いっきにソルトに感情移入するのである。

 

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CIAが弱すぎる

これは物語の展開上、しょうがないのだが、とにかくCIAが弱すぎる。

超重要人物のオルロフは登場場面ではマスクを被せ内部を見せないリアリティを演出しているのに、一旦待機させる時はマスクも被せず、警護も2人だけ。

そして、ソルト1人を全然捕まえられない(笑)

アクションシーンが凄いので、ソルトの能力が高過ぎる設定なのだが、やはりCIAが弱すぎるのだ(笑)

 

スパイが「愛」を選ぶという物語

この映画は、ソルトの気持ちは何なのか?視聴者が推理していく内容だ。

最初はアメリカへの忠誠、しかし、今度はロシアへの忠誠。

どれが本当のソルトなのか?

そして、一体何をしようとしているのか?

アンジェリーナジョリーは表情を使い、その感情を表現していく。

本当のラストでウィリアム・ピーボディが推理するのだが、そこまで何の説明もないのでソルトの行動だけで読み解いていく必要があるのだ。

基本的に夫マイクへの愛がテーマなのだが、スパイとして無理があるような・・・

ただ、ここが本作最大のテーマなのであろう。

夫への愛が動機となって、すべての行動が繋がっていく。

 

結末はどうなる?

ソルトの心情は下記の流れとなる。

①最初はロシアへの忠誠。

②アメリカ(CIA)の忠誠は見せかけ。

③しかし、夫マイクを本気で愛してしまう。

④それに気づいたロシアが動き出す。

⑤忠誠を確認する為、目の前でマイクを始末される。

⑥ここからマイクへの復讐に変わる。

⑦ロシアの洗脳から目が覚める。

⑧今度はアメリカを助ける為にホワイトハウスで翻弄する。(ロシアの計画を壊すため)

通常であれば、これらをパートナーなどに言うことで、主人公の心情がわかるのだが、ソルトにはそれがない。

だからこそ、ソルトの心理が途中まで全然わからないまま話が進む。

ただ、監督はあえてこれを狙ったのだろう。

そして、それを表情だけで演出したアンジェリーナジョリーも凄いと思う。

恐らく2回観ると「あぁ~、だからこう言ったのね?」とか腑に落ちてくると思われる。

2重スパイという複雑な内容だが、アクションも凄いし、見応えのある映画だ。

 

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