※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

ポスターなどからコメディ映画と思いきや、とんでもない!

『殿、利息でござる』は、実話に基づく男たちの感動ドラマであった。

舞台は1766年、仙台藩の吉岡宿という宿場。

当時は伝馬役(てんまやく)といわれる公的な貨客輸送(馬で人や物資を運ぶ)をする仕事があった。

その馬にかかる費用や、馬を扱う人への費用は、通常であれば藩から助成金がでるのだが、この吉岡宿は藩の直轄領ではないので、自分達で負担しなければならなかった。

その結果、町に住む人の負担は増え、破産者や夜逃げを行う者も増え、その分町の負担もどんどん増える悪循環に陥っていた。

そんな中、町の窮地を救うべく男たちが立ち上がるのである。

どうすれば伝馬役の負担を減らし、町を救うことができるか?

茶師である菅原屋篤平治は、とんでもない考えを思いつく。

それは、町の有志で金を出しあい、それを藩に貸し、その利息で伝馬役の負担を減らすというアイディアだ。

しかし、藩、つまり殿さまに貸すお金である。100万円や、200万円では意味がないし、利息にもならない。

今のお金で3億円くらいの調達が必要なのである。

集まった有志は、家財を売り払い、すべてをお金に変えていくのであった。

この町を想う有志の「絆」や「志」に感動する作品である。

 

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慎みの掟

ある程度資金が調達できる流れになるのだが、まとめ役である千坂仲内が「慎みの掟」というのを作る。

その名の通り「つつしむ」ことが中心となっている。

お金を出した有志が勘違いせず、威張らないような掟だ。

「飲み会では上座に座らない」「道を歩く時は端を歩く」など、『お金を出して町を救った』という恩に着せないようにする為である。

つまり、皆に『有難がられる為の行動』にしないということだ。

この報いを求めないという精神が非常に素晴らしい。

しかも、この掟は家が続く限り、子孫の代まで守ろうとするのだ。

ボランティアに携わっている方など、このシーンを見るともう一度最初の気持ちに戻れると思う、

ボランティアを始めたきっかけ、最初は人助けだけが望みであったが、時が経つと感謝されたい欲や、報いを求める欲が出てきてしまうことも多い。

そんな時に、この映画を観ると襟を正せるようになる。

 

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守銭奴の本心

有志が結束していく過程がこの映画の見どころであるが、忘れてはならないのが冒頭の浅野屋甚内(山崎努)である。

冒頭、夜逃げをしようとする家族を呼び止める。その家族に浅野屋甚内はお金を貸していたからでる。

守銭奴で有名な浅野屋甚内なので、この家族がどうなるのか?冒頭で強烈な「引き」を作る。

しかし、後半で浅野屋甚内の志が息子の2代目(妻夫木聡)によって発覚するのだ。

守銭奴に徹した理由は町を守る為であり、いつかこうした有志が集まる時にお金を役立てたいという思いだったのである。

その為、食にお金を使うのも避け、コツコツ貯めていったのである。

こうして親子2代の悲願が達成するのである。

また、長男である主人公の穀田屋十三郎(阿部サダヲ)は幼少の時に養子に送り出されてしまう。

これは2代目が目が悪いからであり、目が悪い子供を養子に出せないといった理由からであった。

すべての私財を差し出した浅野屋甚内。

お米を買うお金もなくなってしまい、稼業である造り酒屋を営むことも出来なくなってしまう。

しかし、その心意気が藩主である伊達重村(羽生結弦)に評価され、新しい酒名を与えらえるであった。

(※ちなみに羽生結弦の特別出演はリハーサル当日まで極秘だったようだ。有志達が藩主を観てリアルに驚く様子を演出するためである。確かに羽生結弦にはびっくりした。)

こうして、浅野屋は現在も続いているのである。

中盤から畳み掛けるように感動が押し寄せてくる。

それは押し付けられるような感動ではなく、当時、町の為に命を懸けた男たちの志に自然と涙が溢れる感動なのである。

 

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