※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
全ての『通信インフラ』は優秀なエンジニアの前には無防備であることが確認できる映画だ。
まぁ、電話でもネットでも『通信インフラ』を利用した場合、エンジニアが本気を出せばその内容は簡単にわかってしまうだろう。
通話内容、メール内容、検索履歴などなど、個人情報は丸裸にされる。
「そんなの嫌だ」と誰もが思うが、通信インフラと繋がっているのだから100%防ぐのは不可能である。
ただ、それを政府がやってしまったら問題だ。
そして、情報が筒抜けになるだけならよいのだが、『通信自体』をコントロールされてしまう危険をこの『スノーデン』では伝えている。
例えば、日本の横田基地でエンジニアが通信インフラに細工をすれば、電気や通信など全てコントロールされてしまうという描写もある。
そうすることで、万一アメリカと日本の同盟関係が解除された時に日本を『瞬殺』できるわけである。
なぜなら通信インフラをおさえて混乱させたり、電気をストップさせたり、情報操作することで国家を壊滅状態にできるわけである。
つまり、テロ対策として情報収集が目的であったのだが、CIAの情報管理部門がどんどんエスカレートしていってしまう背景を描いている作品なのである。
スポンサーリンク
エスカレートするCIA情報管理部
テロを未然に防ぐのは素晴らしいことなのだが、それを情報収集だけではなく、情報コントロールまでやってしまうことが最大の問題なのだ。
上記の例で出てきた横田基地。数年後、もしこれが自動システムとなったら?
誤作動を起こして、大混乱を招く危険もあるのだ。
『2001年宇宙の旅』のハルや、『イーグルアイ』などの管理システムは、映画だけの話ではなくなってしまう。
そして、それが超リアルであることをスノーデンは伝えているのである。
CIA情報部門の今の管理ステムが、この調子でどんどんエスカレートしていくと、個人情報の漏えいなんて優しいものではなく世界が大混乱してしまうリスクがあるのだ。
「安全」と「プライベート」
作品の中で面白いシーンがある。
それは「安全を取るか、プライベートを取るか」というCIAの質問だ。
例えば、温泉に入っていていたら強盗が現れた、今すぐ逃げないと銃で撃たれてしまう。こういった時に、洋服なんて着ないで逃げるはずだ。
これは極端な例かもしれないが、人間の欲求にはレベルがあり、「安全の欲求」というのが一番強い。
だからこそ、プライベートよりも安全が優先されるべきだとCIAは考えているのであろう。
テロに命を狙われるなら、グーグルの検索履歴を知られた方がマシだからである。
つまり、CIAにも「正義」はあるのだ。
しかし、その「使命感」からどんどんエスカレートしてしまうのだ。
こういった背景も描かれていて、CIAが絶対的な巨大悪だとは表現されていない。
ただ、誰の目からみても「行き過ぎている」と思うだろう。
スポンサーリンク
スノーデンの内部告発は正義?それとも悪?
この映画では当然スノーデンは正義に描かれている。
しかし、作品の中でも触れられているがテロや重大犯罪を未然に防ぐことへの正義も忘れてはならない。
犯罪が起こる前に防げれば、それがベストだ。
しかし、その『代償』の重さをどう判断するか?これは人によって異なるであろう。
自分のプライベートは侵害されてもいいから、とにかく安全に生きたいと願う人もいるだろう。
しかし、それが行き過ぎてしまうと、国家レベルで壊滅できるほど強力なものになってしまう。
国家は個人の集まりなので、その個人の情報を映画のように膨大に集めれば、国家レベルの攻撃ができてしまうのである。
そうなると監視システムというレベルではなくなってしまい、核爆弾よりも恐ろしいものなのだ。
なぜなら、誰にも気づかれず、静かに遂行されるからである。
スポンサーリンク