※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
日本の武士道をハリウッドが描いた『ラストサムライ』。
こういった「サムライ」や「ブシドー」をアメリカ(ハリウッド)が描くと、高確率でおかしな方向へ向かう。
日本の文化をとにかく大げさに、コミカルに描かれることが多いのだ。
しかし、本作『ラストサムライ』は違う。
細かい部分まで日本人の目線でしっかり描かれているのである。
まず着眼点である『礼』についても素晴らしい。
時代がどんどん変わっていき、新しい体制と古い体制に分かれる。
当然、新しい体制に向かった方が効率的であり、幸福感も上がるかもしれない。
冒頭の横浜のシーンでしっかりそれが描かれている。
しかし『礼』を守る精神文化も忘れてはならない。
武士にとって髷は命であり刀は魂だ。
そして『礼』とは、これらの精神世界を表すものであり、ラストで勝元が倒れた時の敵側の反応を観ればその重要性が一層引き立つ。
こういった見えづらい所でも日本人への敬意がしっかり感じられ、胸が熱くなった。
監督も脚本もアメリカ人だが、武士道を偏見なく描き切った背景には、膨大なリサーチが必要だったはずだ。
「日本人でもここまで勉強しないだろう」という所まで歴史と文化を勉強したと思われる。
こうして生まれた『ラストサムライ』。
日本人が観て、絶対に損はしない作品だ。
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あらすじと感想
主人公であるネイサン・オールグレン大尉(トム・クルーズ)は、何の希望もなく酒浸りの毎日を送っていた。
なぜなら南北戦争において上官の命令で関係のない人々まで撃ってしまい、その罪悪感に悩まされているのだ。
そんなある日、日本の大臣である大村から「軍隊訓練」のオファーを受ける。
日本は近代国家建設を目指しており、軍の補強が急務だったのだ。
そのオファーを承諾するネイサン・オールグレン大尉。
明治政府に敵対する士族の討伐を目標に、政府軍を訓練していくのであった。
そんな中、士族が鉄道を襲ったという情報が入る。
ただちに討伐に向かう政府軍。
しかし、まだまだ訓練不足の政府軍は士族の攻撃に壊滅してしまうであった。
士族の領袖である勝元盛次(渡辺謙)は、オールグレンに不思議なものを感じ、殺さずに捕えるのであった。
そして、士族の村で生活するオールグレンは、この古きよき風習に魅力を感じるようになる。
武士道の精神世界に魅了されていくのだった。
渡辺謙の凄味
この映画において古き日本、そして武士道の象徴となるのが士族の領袖である勝元盛次であろう。
勝元盛次がダメなら、いくらトムクルーズが良い演技をしても、武士道は伝わらない。
しかし、渡辺謙は完璧に勝元盛次を演じきっている。
立ち振る舞い、声のトーン、威厳、これが日本が誇る武士道といっても過言ではないであろう。
決戦前の般若心境も見事だ。
もっともプレッシャーのある役だったと思われるが、高いクオリティで演じきった渡辺謙はさすがに凄い。
アカデミー賞助演男優賞ノミネートという偉業も納得だ。
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トムクルーズに負けてない真田広之
そして、渡辺謙の他に何と言っても真田広之の存在感が凄い。
トムクルーズと並んだ時も全然負けていない(笑)
殺陣も素晴らしいし、勝元への忠誠心もよく描かれている。
また、決戦前の「舞い」も素晴らしかった。
まとめ
日本だけではなく、世界も目まぐるしいスピードで時代が進んでいる昨今。
『効率的』という魔力に心を奪われがちだ。
しかし、こうした作品を残してくれたおかげで、一度立ち止まるチャンスがもらえる。
日々の生活の中で変化への対応に疲れたら、ラストサムライで描かれる古きよき村の風景を思い出してほしい。
あれこそが日本人の心の故郷なのである。
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