※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

大ヒット映画『アイアンマン』の監督を務めたジョン・ファヴロー。

そんなジョン・ファヴローが、監督・脚本・制作・主演と全てを注ぎ込んだのが本作『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』である。

コメディドラマ映画なのだが、エンターテイメント要素の中にも、しっかりと伝えたいことが盛り込んであり素晴らしい作品だ。

料理が中心となってストーリーが展開されるが、最も重要なのが親子の絆であろう。

仕事を失った主人公カール(ジョン・ファヴロー)がフードトラックでキューバサンドイッチの販売を始める。

夏休みを利用して、息子パーシー(エムジェイ・アンソニー)も手伝うのだが、料理人としての哲学を教える所が見どころである。

フードトラックの改装を手伝ってくれた地元の労働者にサンドイッチをご馳走するのだが、息子パーシーが少し焦げてしまったサンドイッチを出そうとする。

それをめちゃくちゃ怒るカール。

「料理で人を幸せにする」これが喜びだと説くのである。

そう、この一貫性が本作の魅力である。

カールは本当に嬉しそうに料理を作る。

そして、料理を食べさせ「美味しい」という言葉に子供のように喜ぶのだ。

冒頭で仲間に試作品を振る舞ったり、仲の良い彼女に振る舞ったり、料理をしている瞬間が実に幸せそうなのである。

試作品を振る舞った仲間には「本当に美味しいか?」「嘘じゃないか?」と何度も確認する所など、プライドだけが高い料理人と違い、真剣に料理と向き合っている姿勢に感銘を覚える。

そして、酷評したブロガー(本当はいい奴)には本気で怒る。その中に一緒に作るスタッフの努力などを訴えるシーンもあり、カールの人柄が見事に演出されているのだ。

だからこそ、マーティンが助手として追いかけてきてくれたことも自然に入ってくるのである。

「この人と一緒に仕事がしたい」と思われる人物像なのである。

 

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酷評ブロガーVSダスティンホフマン

お店のオーナーであるダスティンホフマンは、変わらない味(歴史)に重きを置いている。

料理人であるカールは、逆に客のマンネリを危惧し新しい創造的な料理を作り出そうとする。

どちらも正しいからこそ、難しい問題である。

ただ、やはりお店の方針を決めるのはオーナーであり、それを形にするのがシェフの役目だ。

自分が料理批評するきっかけとなったのがカールの料理だったことから、再訪問することに期待を寄せるブロガー・ラムジー・ミッシェル。

創造的な料理を提供しようとするカールであったが、顧客の満足を優先する為オーナーは承諾しないのである。

そして、いつも通りの料理を出すことでブロガーはがっかりしてしまうのである。

その酷評レビューがツイッターでどんどん拡散し、傷つくカールであった。

ただ、ここで重要なのはブロガーも傷ついているという点だ。

カールの料理にわくわくしていたのに、以前と変わらぬ料理に、挑戦を忘れてしまったのか?と失望したことを正直にレビューしただけだったのである。

だからこそ、実はブロガーVSダスティンホフマンの戦いだったのである。

 

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右肩上がりの展開も爽快

SNSでヘマをし、仕事もクビになってしまったカール。

ここから上がっていく物語なのだが、どんどん右肩上がりになっていくのが良い。

通常であれば、後半でもう一度落ちる展開が待っているものだ。

その方が、ラストがさらに盛り上がるからである。

例えば、フードトラックで出したサンドイッチで食中毒になってしまったとか、フードトラックが壊れてしまうとか。

ハリウッド映画ではラストの前に、必ずピンチを入れるのである。

しかし、それをやらずにとにかく右肩上がりにした。

これこそジョン・ファヴローの挑戦であり、カールと同じく創造的な映画にしようとした狙いではないか?

ラストの前に、あからさまなピンチを描かなくても面白い映画は出来る!というチャレンジだ。

だからこそ、監督と主演でその生き様がダブっているのだ。

本作はシェフの物語ではあるが、ジョン・ファヴローが映画という素材を料理したと考えることもできるだろう。

何はともあれ、主人公の哲学や一貫性がしっかり描かれ、見応えのある作品に仕上がっている事は間違いない。

 

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