※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
ケヴィン・スペイシーとサミュエル・L・ジャクソンが知力を振り絞る濃厚なサスペンス。
この二人の駆け引き、裏をかく展開が素晴らしい。
アクションシーンもあるが(興業的な)、濃密な心理サスペンスが好きな人はたまらない映画だろう。
まず冒頭から引き込まれる。
シュールな交渉中、ハラハラ感を倍増させる「犬の鳴き声」
これがイライラするほど、うるさいのである。
酔っぱらって妻の浮気に怒り狂っている親が、いまにも娘を撃ってしまいそうなのに、ワンワンうるさいのである。
緊迫感を煽る最高の演出だ。
また、この交渉シーンにより、サミュエル・L・ジャクソンのキャラクターと、頭の良さをハラハラドキドキしながら視聴者に刷り込まされる。
正義感が強くて、頭が良くて、仕事に誇りを持っている。
そして、命の危険があっても人質を救出に向かう。
この時点で主人公に共感できない点は1つもない。
これにより、中盤でサミュエル・L・ジャクソンが人質をとって立て籠もっても視聴者の心は離れないのである。
重いサスペンスなどは、こういった序盤での掴みがあると、かなり見やすくなる。
また、この序盤の駆け引きだけでも、かなり面白い。
「スピード」なんかも、この序盤の駆け引きで勝利した映画だろう。
という事で、最初からハラハラドキドキで目が離せなくなる映画なのだ。
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交渉人のあらすじ
交渉人として優れた能力があるダニー・ローマン(サミュエル・L・ジャクソン)。
しかし、ある日、仕事仲間であるネイサン・ローニック(ポール・ギルフォイル)から署内の人間が警察年金基金を横領している事実を聞かされる。
詳しい話をする為に、後日会う約束をするが、口封じにネイサンは殺されてしまう。
犯人はダニーに捜査の目がいくよう、横領の証拠品をダニーの家に置き罠にはめるよう企む。
法廷で身の潔白を証明するのが困難だと判断したダニーは、ネイサンから聞かされた犯人の可能性が高いニーバウムと秘書のマギー、たまたま居合わせたルーディ、心配でついてきた同僚警官のフロイトを人質にして、立て籠もることにしたのだ。
立て籠もりながら、ニーバウムに白状させ、事件の真相を暴こうとしたのである。
ここで、警察とのやり取り(交渉人)に選んだのがクリス・セイビアン(ケヴィン・スペイシー)。
今回の事件は組織的だと判断し、内部の人間を避ける為、外部の管轄であるクリスを選んだのであった。
このクリスも、ダニーに匹敵するほど頭が良く、二人が交渉し合う場面は見どころの一つだ。
すぐに突入しようとする理不尽な警察や、ダニーとのやり取りから、黒幕が内部の人間だと確信するクリス。
終盤では、この2人が手を組み犯人を追いつめる。
ケビンスペイシーの希望と警官隊のイライラ
「立て籠もり」がメインで展開される為、風景もほぼ同じだ。
ただ、それでも時間を忘れて見入ってしまう脚本は秀逸。
ケビンスペイシーが交渉人と登場し、指揮を任されて時、少し安堵する。
「この人ならダニーを助けてくれる」
しかし、とにかく突入したがる警察の勝手な行動により、脆く崩れていくのである。
この希望が見えそうで、他者に邪魔される展開は、ハラハラ・ドキドキ・イライラの3重奏を奏でてくれる(笑)
「もう少しでうまく行きそうだったのに!」
と、イライラしていると、別の希望も見えてきて期待してしまう。
しかし、また警官隊の勝手な行動で台無しになる・・・
この繰り返しがなんとも心地よいのである。
ラストはどう?
ラストは主犯格である同僚警官のフロイトを2人で騙す。
クリスがダニーを裏切り、フロイトと交渉するのである。
その一部始終をトランシーバーで拾い、外にいる警官達に聞かせて御用となる展開だ。
ただ、このラストがちょっと中途半端で、視聴者も騙そうとしたのか?意図がわからない。
演出的にはフロイトをハメる為に、2人が仕組んだ芝居というのはわかるが、これにまんまとひっかかるフロイトもどうかと・・・
時間的な制限もあるので、やっぱこれがベストなのかな?
2人が組んで犯人を騙すなら、もうちょっと凄いトリック、視聴者も騙されるような罠をやってほしかった。
ただ、それを含めても完成度の高い映画であることは間違いない。
これだけ濃密なサスペンスはめったに出会えないだろう。
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