※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

このプロメテウスは「エイリアン」の誕生と人類の起源、というファンにはたまらないテーマのSF大作である。

しかし、いざフタを空けてみると「エイリアン」という超ブランドキャラを取り扱えるのに、そのメリットを十分に活かせなかった残念な映画、というのが率直な感想だ。

映画は「具体」と「抽象」のバランスによって面白さや印象が、かなり変わってくると思う。

ある場面をわざと抽象的に描く事で、余韻を残したり、自分の頭で想像したりして楽しむことができる。

しかし、このプロメテウスは抽象的というのではなく、単なる解説不足のシーンが多い。

まったく察することができないシーンが多過ぎて、はじめて観る人は肩すかしを食らうだろう。

 

スポンサーリンク

 

意味不明なシーンが多過ぎる

というのは、投げかけている『問題』のヒントを一向に与えないのである。

例えば、冒頭のシーン。

文明的な痕跡がない大地、その滝壺に1人の人間っぽい生命体(仮に宇宙人とする)がいる。
その宇宙人は筋肉がムキムキで、変な容器に入った黒い液体を飲む。
すると次の瞬間、いきなり苦しみだして滝壺に落下する。
落下しながら、その宇宙人の体内の細胞が破壊→再生という感じで滝に飲まれていく。

以上が、意味のわからない冒頭のシーンだ。


場所はどこなのか?地球?他の惑星?
時代はいつなのか?太古の昔?未来?

こういった演出がまったくないので、想像して楽しむ余地がない。

しかも、この冒頭シーンを回収する場面も解り辛い。
「いつ、この謎がわかるのか?」という期待をしてラストまで観ても、一向に関連した話にならないのでフラストレーションしか溜まらない。


公式サイトによると、このシーンは遥か太古の地球で、宇宙人が地球に適した生命体を創造すべく、黒い液体を飲んで自分の細胞を変化させ、人類の遺伝子を誕生させた!という事らしい・・・

これは、さすがにあの映像だけではわからないだろう。
冒頭なので、テロップかナレーションで解説しても問題なかったと思う。

 

想像しても楽しめない謎が多過ぎる

この映画の場合、「謎」というより「ツッコミ所」という場面が多い。

冒頭の意味不明シーン
ビショップの謎の行動
人間を見た(バカだと察した)宇宙人の行動
エイリアン化すると凶暴化する現象
宇宙人は人間に何を期待したのか?


制作クルーは何も疑問を持たずに、この映画を作っていたのか?
1人くらい勇気ある者が「これじゃお客さん理解できなっスよ」くらい言えなかったのか・・・

 

唯一の救いは美しい映像

シナリオだけならB級映画であろう。

しかし、残念(?)なことに映像は超A級なのである。

意味のわからない冒頭のシーンも、宇宙船の造形も、戦闘シーンも、映像は見事である。

これだけが、この映画唯一の褒めるべき点である。

エイリアンファンに媚びらない姿勢が逆効果になってしまったと思う。

もっとエイリアンファンのニーズをシンプルに満たせば、名作になる可能性も十分にあったはずだ。

皮肉にも極上の食材があるのに、調理方法がわからないシェフを演じてしまったのである。

ということで、魅力的なポスターとキャッチコピーを期待して観ると、確実に消化不良となるだろう。

逆に、単なるエンターテイメントとして観れば面白く感じるはずだ。

 

スポンサーリンク

関連記事