※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
ポスターや表紙から「スーパーヒーロー系」を匂わせながら、なかなかどうして最高峰のサスペンスではないか!
いや~、これをやられたら脚本家は脱帽するしかない。
社会派サスペンスに対してヒーローをブレンドしたセンスは神懸かっており、SF・哲学・アクション・歴史・政治など、混沌とさせつつ1つの答えを導き出すのである。
ここからはネタバレを含むので、まだウォッチメンを観ていない方は是非作品を観てから読んでいただきたい。
まずラストを解説すると、「少ない犠牲で世界を救う」という行動に納得ができない、などの意見が多いようだ。
この映画の最大の見どころである『ラスボスが世界を救う』という最高の仕掛けに驚愕しながら、上記のような問題提起を投げかける。
その答えを握るのが「コメディアン」なのである。
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なぜ、初代シルク・スペクターはコメディアンを愛したのか?
作品の中盤で、コメディアンは初代シルク・スペクターをレイプ未遂する。
ヒーロー系なのに凄い展開だ。
しかし、何を思ったのか初代シルク・スペクターはコメディアンと関係を持ってしまう。
そこで産まれた子供が、ローリー(二代目シルクス・ペクター)である。
人類に絶望したマンハッタンがローリーを火星に連れてきて、彼女の過去を透視したときに2人で気づくのである。
自分の父がコメディアンだったと知ったローリーは、これまた絶望するのである。
しかし、そのことでマンハッタンは人類の奇跡について悟るのだ。
初代シルク・スペクターがコメディアンを愛す矛盾。
そして、そこで産まれたローリー。
これが混沌であり、理性では説明できない奇跡なのである。
では、オジマンディアス地球救済はどうだ?
少ない犠牲で地球平和を実現した。
しかし、それは人類を歪んだ形に変えてしまうことでもある。
非常に矛盾した救済方法なのだ。
ただ、この混沌とした理性で説明できない解決方法によって、命を次の世代に受け継がれるのである。
そうやって続く生命こそ、マンハッタンが火星で語った理性を超えた奇跡なのである。
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ロールシャッハはヒーローなのか?
妥協ができないロールシャッハは、このことを世界に伝えようとする。
しかし、マンハッタンに殺されてしまう。
自分が核戦争の抑止力だと理解したマンハッタンは、別の惑星で命を作ることを目標にする。
最後まで白と黒が混ざらなかったロールシャッハ。
そして、犠牲者の顔を死ぬまで忘れないとつぶやくオジマンディアス。
理性では理解できるが、納得のいかないダニエル。
いったい誰が正義なのか?
いったい誰が主人公なのか?
理性の反対の意味は『感情』だ。
この映画は観る者の『感情』を、それぞのヒーローから引き出すという、とんでもない離れ業を成し遂げているのである。
ロールシャッハから引き出される感情。
オジマンディアスから引き出される感情。
マンハッタンから引き出される感情。
ダニエルから引き出される感情。
それぞれの感情に対して、誰に共感をするのか?
それを選ぶのは自由だ。
それぞれのヒーロは、それぞれの正義を貫いているのである。
感情によって「核兵器」を作った人間。
感情によって核戦争へと進む人類。
それを感情によって止めようとするスーパーヒーロ達。
非常に興味深いテーマであり、この壮大なサスペンスに対して、あえて1人に絞って共感できないようにしたヒーローたちのキャラ設定は神業だ。
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