※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

不屈の名作とはこういった作品のことであり、恐らく今後100年は愛され続けられる物語なのである。

ミュージカルでもお馴染みだし、映画も何度か撮影されている。

19世紀のフランスを舞台に、人間の尊厳・愛・夢・苦悩・挫折・希望・革命・正義などなど、普遍のテーマを盛り込んだ人間賛歌だ。

歌・音楽も素晴らしい。

そして、今作は登場する俳優のクオリティが高い。

脚本・音楽・演出・演技、すべての要素が高次元で展開されていく。

これ以上の芸術なないのではないか?と思うほど、濃密な時間を過ごせるのである。

そして、それは人生の縮図であるようにも思う。

 

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前半はとにかく悲劇

レ・ミゼラブル、前半はとにかく悲劇の連続である。

不条理・不平等・悲しみのオンパレードだ。

特にアン・ハサウェイ演じるファンテーヌ。

彼女が時代の残酷さによってどん底へ落ちていく過程は、観ていてかなり辛い。

自慢の髪を切って売ったり、歯を抜いて売ったり、体を売ったり・・・

そんな中で歌われる「夢やぶれて」。

この歌ほど、悲しい歌はないと思う。

そして、この歌を完璧な表現で歌い切ったアン・ハサウェイ。

実は高校生からコーラス部であり、カーネギーホールのコンサートに出場した経験もあるほど歌がうまいのである。

女優としてキャリアをスタートさせてから、10年ほどボイスレッスンを受け続けていた努力が、この映画で実現したのは鳥肌が立つほど凄いことだ。

ハリウッドスターの華やかさの影にある努力がわかるエピソードである。

 

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ヒュー・ジャックマンとラッセル・クロウのハーモニー

ヒュー・ジャックマンとラッセル・クロウの歌も素晴らしい。

中盤、この2人が迫力ある歌を繰り広げる。

ラッセル・クロウの歌がヘタだという感想もあるが、そういう人はプロミュージシャンのCDだけ聞いていればよいと思う。

アカデミー俳優の演技と歌の表現は、少なくても魂に響くものがあり、それを『ヘタ』の一言で片づける浅はかさこそ悲劇だ。

ヒュー・ジャックマンは抜群の安定感があり、ラッセルの良さを引き出すシーンはさすがである。

 

 

撮影しながら歌唱する

この映画の凄いところは、実際に撮影しながら歌唱したことだ。

通常、歌を先に録音してから、撮影に入る。

しかし、レ・ミゼラブルはリアルタイムで歌っているのだ。

これにより、演技をしながら本当に歌うことで臨場感が圧倒的に表現されている。

本当に歌いながら演技をしているので、観る者の心にダイレクトに届くのである。

実際の撮影では、俳優にワイヤレスのイヤホンをつけてもらい、キーボードの演奏に合わせて歌ったようだ。

生歌だからこそ、圧倒的な迫力があり、訴えているテーマが深く響くのである。

衣装に小型マイクをつけ、足音などを消す工夫も、この作品の凄いところなのである。

 

ミュージカル映画が苦手な人も、ぜひこの映画を観てほしい。

ミュージカル映画の印象が、かなり変わるはずである。

そして、悲劇を乗り越えた人間賛歌を是非堪能していただきたい。

 

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