※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
『科学と感情』この2つの視点から描かれる本作は、ターミネーターなどでやり尽くされた展開を見事に打ち砕いでくれた。
ロボットの無機質感と、人間のもつ感情を子供向けに見事に調和できたと思う。
「ベイマックス」というキュートなキャラクターに設定することで、無機質なロボットを「泣けるほど」人間味のあるストーリーに溶け込ませるのは、さすがディズニーアニメーションだ。
また、主人公を最初から「天才」にしてくれたおかげで、テンポよく話が進むことも見所だ。
ただし、天才であっても「独力する姿」を描いたり余念がない。
1%の閃きと99%の努力を展開するシーンが初期の方にあるのだが、好きなことに打ち込むときの「寝る間を惜しむ」表現が好きだ。
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科学への警笛と心
ベイマックスは子供目線で科学の危険性について何度か描かれる。
大きな展開をむかえる「瞬間移動装置」などがそれである。
また、主人公が兄への復讐のためにベイマックスを利用するところなど、「科学の危うさ」もメッセージとして発信している。
犯人役も根底にあるのは「怒り」「復讐心」だ。
それらの感情と科学を組合わせる危険性もしっかりと描かれている。
そんな中、兄の「人々の助けになりたい」という心が、この物語のメインテーマであり、一貫しているメッセージだ。
ベイマックスは無機質ながらも、常に「痛み」に対してサポートしてくれる。
主人公が身体のどこかを痛めたら、すぐにサポートしてくれる。
それが「物理的な痛み」から、「心の痛み」に変化する過程が、この映画最大の見所だ。
ベイマックスの結末
以上のように「物理的な痛み」から「心の痛み」への変化を、子供が理解できるギリギリの表現で描いているのが秀逸だ。
映画のラストで、教授の娘を救うためにベイマックスは犠牲となる。
主人公(と教授の娘)を助けることが、ベイマックスに機械的にプログラミングされていたことだ。
よって、普通に主人公と教授の娘を元の世界に戻せば任務完了だ。
この機械的プログラムだけも、しっかり泣ける。
しかし、ラストにはさらに泣ける結末が用意してあるから涙腺が崩壊してしまう。
それは、主人公と教授の娘を助けるために使用したベイマックスの腕だ。
その腕の中に、なんと兄がプログラムしたディスクを握っていたのである。
これは「自分が残りたい」というベイマックスのエゴではなく「ヒロの心が痛まないように」という配慮である。
つまり、ベイマックスはヒロを物理的に助けただけでなく、心も救っていたのである。
これにより、単純に「またベイマックスが復活できる」ということよりも、「これまでのヒロとの友情が確かなものであった」という感動も得られるのである。
子供と一緒に観ていても心が温まる映画だ。
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