※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

『ロード・オブ・ザ・リング(旅の仲間)』を2002年に映画館で観た時、正直自分には合わない作品だと思った。

178分(約3時間)という長さ、展開の遅いストーリー、1話で完結しないシナリオなどなど、映像や世界観は最高なのだが、イマイチ入り込めない印象だった。

やはり、1部が上映された当時の心境として、完結しないで続くというのに納得できなかったのである。

バック・トゥ・ザ・フューチャーやターミネーターのように、とりあえず1話でまとめてある作品であれば印象も異なっていたと思われる。(ただ、ロード・オブ・ザ・リングは1部が公開した時から、3部作であるという説明はしている。)

でも、やはりこの中途半端な終わり方に納得できなかったのである。

 

しかし時は流れ、3部作も完結ということで「まとめて観てみよう」という欲が出てきた。

そして、数年前挫折した1部から観てみることに・・・

1日かけて全て観た感想として、「めちゃくちゃ面白い!」「これはまとめて観るべきだ!」と感じた。

1年おきに次のシリーズが公開されていたが、やはり1年後は長すぎる。

それに、1日中ロードオブザリングを観ていると、あの世界に入ったような感覚を味わえる。

携帯電話も、電柱も、電子機器も一切ない、あの神話やファンタジーの世界へ・・・

 

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あらすじ

ロードオブザリングのあらすじは超簡単である。

魔力を秘めた指輪を、破壊しに行くという物語だ。

冥王サウロンというラスボスが作った指輪は、世の中を支配する力を持っていた。

冥王サウロンは指輪の力を使って、世の中を支配しようとしたが、人間とエルフの反撃により倒される。

冥王サウロンは倒されたが、指輪は残っており、その指輪は様々な人の手に渡っていった。

そこから数千年の時を経て、サウロンの魂が再び力をつけるようになる。

指輪がサウロンの手に渡れば完全復活となる。

そして、その指輪を持っていたのが主人公であるホビット族のフロドである。

サウロンが復活しないよう、指輪を壊そうとするが、指輪はサウロンの本拠地である滅びの山の火口でしか壊せないのである。

そして、この指輪を滅びの山の火口に捨てに行く冒険が始まるのである。

 

1作目『旅の仲間』

1作目では、この指輪について詳しく解説されている。

指輪には不思議な魔力があり、持ったり、近づくだけで理性を失ってしまうのだ。

しかも、美女が持つフェロモンのように誘惑してくるのである。

理性を失わせ、指輪を欲しくさせ、ハメたくなる。

哲学的なこの設定が全シリーズに適応されている。

時には仲間が理性を失ってしまい、お互いが疑心暗鬼になってしまうのだ。

この指輪の誘惑がロードオブザリングの見どころの1つである。

そして、その魅惑の指輪を肌身離さず持ち続けている主人公フロドの精神の戦いでもあるのだ。

主人公フロドは派手なアクションシーンもなければ、敵を倒すようなシーンはほとんどない。

これだけ、CGなどでファンタジーな悪役がいるにもかかわらず。

そう、フロドはずっと指輪の誘惑と戦い続けていたのである。

これが3部作の最後にわかり、大きな感動が押し寄せるのだ。

 

また、1作目ではサブタイトルのように『仲間』がポイントとなる。

指輪を破壊して平和な世の中にする為に、人間やエルフ、ドワーフなどの種族が力を合わせるのである。

仲間は全部で9人。

・フロド(主人公でありホビット族)
・サム(フロドのおかかえ的存在でありホビット族)
・ピピン(ホビット族)
・メリー(ホビット族)
・ガンダルフ(魔法使いであり、リーダー的存在)
・アラゴルン(かつてサウロンを倒したイシルドゥアの子孫)
・ボロミア(ゴンドールという南の国の大将)
・レゴラス(弓の名手でありエルフ)
・ギムリ(斧を使うドワーフ)

この9人で指輪を滅びの山の火口に捨てに行くのである。

エルフやドワーフが登場し、ファンタジー系が好きな人や、ロールプレイングゲームを昔からやっている人にはたまらない設定だ。

そして魔法使いのイメージも最高でピッタリだ。

また「魔王を倒した勇者の子孫」という王道も外さない。

しかし、本作はその勇者の子孫が主役でない所が素晴らしい。

戦いもそれほど強くない、体も小さいホビット族がメインなのである。

なぜなら、ホビット族は純真だからである。

指輪の誘惑に負けない純真さが、間接的に魔王を倒すのだ。

 

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2作目『二つの塔』

この2作目で物語は大きく展開していく。

まず、9人の仲間はそれぞれ別の道を行く。

指輪の魔力により近くにいる人間も危険であり、主人公フロドは1人で滅びの山の火口に行くことを決意するのだ。

ただ、おかかえ人のサムも強引に同行する。

そしてダークサイドに堕ちてしまった魔法使いサルマンにより、オークの大量生産が始まる。

オークの襲来によってホビット族のピピンとメリーは連れ去られたしまうのであった。

それを救おうとするアラゴルン、レゴラス、ギムリ。

また、バルログとの戦いで死んだと思っていた魔法使いガンダルフは、なんとクラスアップして登場する。

白色の魔法使いとなったガンダルフがめちゃくちゃカッコイイ!

『二つの塔』ではローハン王家などの協力国が登場し、この辺から大規模なバトルへと展開していく。

そして最大の見どころは、フロドとサムの道中に加わるスメアゴル(ゴラム)。

スメアゴルは、以前の指輪の持ち主であった。

その魔力により、魔物のような姿になってしまったのだ。

人格が二つあり、指輪を奪おうとする人格と、フロドに協力しようとする人格だ。

このCGがかなり凄い。

モーションキャプチャーという技術を使い、実際の声優が動きも演じている。

CGとは思えない質感まで再現されていて、スメアゴルの存在感は作品の世界観を見事に演出している。

また、元ホビット族であり、フロドの未来をも暗示しているようで興味深いキャラクターである。

 

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3作目『王の帰還』

いよいよ最後の作品である。

この3作目では、なんと人間だった頃のスメアゴルの話から始まる。

どういった経緯でスメアゴルが指輪と出会い、あのような姿になったのか?これも益々フロドの未来のようでちょっとしたサスペンスだ。

『スターウォーズ エピソード3』の場合、冒頭で元は人間だったサイボーグのグリーヴァス将軍が描かれる。あれはアナキンがこれからダースベイダーになることへの暗示だったわけである。

これと同じで、スメアゴルの姿が、未来のフロドを暗示するものだったとしたら・・・

『王の帰還』はいよいよ人間&エルフとオーク集団の全面対決である。

このバトルの迫力は素晴らしい。

中でも幽霊を味方にして戦いに参加させる映像は見事である。

多くはCGであるが、かなりのエキストラも参加していたはずだ。

大迫力の戦闘シーンが楽しめるようになっている。

そして、最後は滅びの山の火口に辿り着くフロド一行。

しかし、最後の最後でフロドもダークサイドに堕ちそうになってしまう。

スメアゴルが本性を現し、サムの助けもあって、最後は無事に指輪を投げ捨てることができた。

これにより、オークたちも消滅し、世界は救われたのである。

 

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バッドエンド

世界を救った9人の仲間は、それぞれの世界に戻り幸せに暮らしていた。1人を除いて・・・

その1人とは主人公フロドである。

フロドは物語中、何度か指輪をハメてしまい、実は精神にダメージを負っていたのである。

おかかえだったサムは好きな娘と結婚し、最高にハッピーだ。

アラゴルンも再統一王国の初代上級王になったりめでたしめでたしだ。

しかし、フロドはガンダルフと共に『あの世』へ旅立っていくのである。

めちゃくちゃバッドエンドである。

この様に、直接な攻撃もなく、地味にみえたフロドの活躍なのだが、実は一番戦っていたことがわかるのだ。

そこまですり減らしていたのかぁ~と、最後になって理解することが出来る。

迫力のあるバトルをこなすアラゴルンやガンダルフの活躍は一目瞭然だが、指輪を捨てるだけという一見地味な仕事が一番キツイという、現実世界共通の真理に気づかせてくれる映画なのである。

ファンタジー映画というハッピーエンドが約束されたジャンルにおいて、主人公がまさかのバッドエンドを迎えるという「どんでん返し」で幕を閉じる。

休む暇まく、指輪の魔力と戦い続けたフロドに拍手を送りたくなるラストなのだ。

 

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