※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
これだけの「アイディア」を形にでれば、それは大ヒットしてしまうだろう。というのが本作「カメラを止めるな!」の感想だ。
アイディアだけでも素晴らしいが、前半の『長回し』は必見!
この長回しはブライアン・デ・パルマも驚くだろう(笑)
ほぼ舞台を観ているように、リアルタイムで進む映像に言葉は失う。
それは怖いとか、面白いとかではなく、『チームワーク』に対してだ。
ここまでの長回しをする為には、緻密な計画と、チームワークが不可欠だ。
スタッフ全員が一丸となって撮影に臨んでいることがヒシヒシと伝わってくる。
何の予備知識もなく観たが、この前半の部分でスタッフの努力に泣きそうになった。
スポンサーリンク
後半の展開
そして後半になると、さらに素晴らしい。
このワンカットの舞台裏に入ってくるのである。
ん~、素晴らしい展開だ!
そうそう、この長回しの舞台裏が知りたかったのだ。
どんな台本で、どんな進み方で、どんな仕掛けがあるのか?
これを、ストーリー仕立てで演出してくれるのである。
すると、前半の「あれっ?」って思ういくつかのシーンの辻褄があってくる。
違和感を感じる場面が前半にはいくつかあるのだが、それが様々な伏線になっているのだ。
なるほど、そんなトラブルがあってそうなったのか!の連続であり、ホラー要素はないのにハラハラドキドキしてしまう(笑)
撮影前の仕込み
撮影が始まる前の仕込みも素晴らしい。
例えば、ヒロイン秋山ゆずきが「ゲロを浴びるのはNG」と監督に伝える。
しかし、前半ですでに観ている我々は、「えっ?でも浴びてたよな?」と回想する。
しかし、アル中のおじさんが登場することで納得するのである。
そして、前半で明らかにおかしな行動をした録音マン。
撮影前に「硬水と軟水」についての伏線が入る。
なるほど、あの行動は水が影響していたのか(笑)
この様に、前半にワンカットでみた映像の違和感を見事に回収していくのだ。
家族愛も仕込む
この映画の魅力の中心は、日暮ファミリーだろう。
監督として、あくまで「仕事」を優先し、信念より妥協を選んでしまう日暮隆之。
そして、元女優でありながら役になりきり過ぎてしまう妻の日暮晴美。
そして、一切の妥協を許さず、すぐに感情的になる娘の日暮真央。
妻の晴美は、夫の作品を必ずチェックしたり、夫の書いた台本を隠れて読んだり、実はリスペクトしている様子。
しかし、夫の隆之は『大人の事情』で妥協しなければならない部分を飲み込んでしまうクセがついている。
また、そんな自分を娘が嫌っていることも理解しており、その歯がゆさから酒に走るシーンもある。
しかし、今回のワンカットの仕事を受け、どんどん自分を取り戻していく。
セリフにはない若手俳優のグチもアドリブで言う(笑)
そして、このワンカットを成功させようと、全員を鼓舞する隆之に対して、娘の真央は尊敬をとりもどしていくのであった。
怖い要素はほとんどなく、コメディとどんでん返し、そしてファミリー愛が良くまとまった素晴らしい作品である。
スポンサーリンク