※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
こちら、まだ観ていない方は急いで観て欲しい。
それほどネタバレ前に観るのが重要な映画だ。
観る前にネタバレしてしまったら非常にもったいない作品なのである。
では、ここからネタバレも含め感想を書いていく。
まず、この映画のメインテーマは突如現れた宇宙船に対して「地球に来た目的は何か?」という謎を解いていくストーリー構成だ。
そのコミュニケーションツールは「言語」であり、だからこそ主人公ルイーズ(エイミー・アダムス)は言語学者なのである。
万一、宇宙人の目的が地球を侵略することだったら大変なことだ。
かといって、最初から友好な姿を見せるとハラハラドキドキ感がなくなってしまう。
この辺の演出も見事で、中盤まで、この宇宙人は敵なのか?味方なのか?微妙なラインで描かれている。
この微妙なラインによって、主人公グループと、宇宙人たち、そしてCIAという三角関係が生まれ、一方通行にならずに楽しめる。
例えばマイケル・スタールバーグが演じているCIAのハルペーン捜査官。
彼はすぐに攻撃につなげようとするが、それは当然なのである。
市民の安全を守るのが第一だからである。
そういう意味で、この映画には悪は1人も出てこない。
みんな、それぞれのポジションで最善をすつく。
そのリアリティが凄まじい緊張感を生み出し、『タコ型宇宙人』が登場してもコメディにならないのである。
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宇宙人が伝えたかったことは何か?
この映画、ポスターや表紙にある日本を代表するお煎餅「ばかうけ」のような宇宙船が登場する。
シリアスなSFっぽいので、最初はこの宇宙船に向かってコミュニケーションをとるものだと思っていた。
しかし、序盤の方で早速宇宙人が登場する。
火星に出てきそうなタコ型の宇宙人だ。
そのタコ型宇宙人はコミュニケーションツールとして、文字を利用する。
その文字が特徴的であり、この作品を象徴するようなデザインだ。
どこから始まるのか?
どこで終わるのか?
わからないような文字だ。
つまり、始まりと終わりの概念がないのである。
これを抽象的にみると、時間の流れが存在していないということだ。
左から読む?右から読む?上?下?
非常に抽象度が高い文字だが、主人公やパートナーのイアンは、少ない手がかりから解析を試みるのである。
そして、やっとの思いで解析することができたのである。
それは、『地球人よ、協力しなさい』ということだ。
この一言の為に、凄い抽象的な文字を使うところがグッド^^
武器とは何だったのか?
宇宙人の伝えるメッセージは非常に抽象的だ。
宇宙人と手の平を合わせた時にルイーズは未来を見る力を得る。
それにより、ヘプタポットの言語がわかるようになったのである。
なぜか?未来でヘプタポット言語の第一人者になっていたからだ。
未来でヘプタポット言語を教え、本も出版している。
その未来を思い出すことで、宇宙人の真の目的を読めるようになったのである。
それは、3000年後にヘプタポット(もしくは宇宙全体)に危機が訪れ、それには人類の助けが必要とのことだ。
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人類を助けるの意味
ヘプタポットは地球に来た目的についてこうも言っている。
『人類を助けるため』
この解釈は2つある。
・人類が核戦争で壊滅状態になってしまうことを助ける
・人類の進化を助ける為
恐らく、この両方だろう。
まず、『協力しろ』というメッセージは、当然人類で協力し合えといっている。
これにより、核戦争などが回避され、人類がまとまって次なる科学研究に打ち込むことができる。
そして、『武器は言葉』との説明から、ヘプタポット言語を学ぶことによって人類が進化するということだ。
ルイーズは1年後に『ユニバーサル言語』という本を出版する。
人類は宇宙人と遭遇しており、科学力も当然人類より上であり、争っているわけにはいかなくなったのである。
それを緩和したのがルイーズだという事実があるので、この本は世界的ベストセラーになっているのだ。(というより教科書)
人類が一つになった祝賀会も開催され、そこにはヘプタポット言語が中心になる演出がある。
この言語を地球記共通語とすることで、世界がまとまり、コミュニケーションによる意思の疎通もスムーズになる。
また、言葉が思想を作るというフレーズもあるとおり、時間的の流れがないヘプタポット言語が人類の共通言語になったらどうなるか?
時間に対しての抽象度が上がる。
それは、ルイーズのように未来が見えるようになる人がどんどん出てくることを意味する。
それにより、未来に起こる危機を回避できるのである。
シャン上将を電話1本で武力解除させたように。
未来の『その時』でもわからないことが、過去に影響を及ぼすのである。
なぜハンナを生んだのか?
「なぜ死ぬとわかっているのにハンナを産んだのか?」
こういった疑問がある人は、いて当然だ。
しかし、こう考えてみてほしい。
「いづれ死ぬのがわかっているのに、なぜ人は子供を産むのか?」
どんな生物も、いつか必ず死ぬ。
死ぬのがわかっている。
それでも子孫を残し続け、同じ時を共有していく。
その長さは実はどうでもよく、どう接してきたか?の方が重要なのである。
ルイーズは時間の抽象度が上がっているので、時間が流れているものではないことを知っている。
ハンナとのわずかな時間の中でも、それが永続的に存在していることを知っているのだ。
始まりと終わりの概念がないほど、時間に対しての認識がかわれば、ハンナが生まれてきてくれただけ幸せなのである。
こういった感覚はヘプタポット言語をマスターしなければ、きっとわからない感覚であろう。
どうしてもわかりたい時は、ルイーズ著「ユニバーサル言語」を買って読んでみてほしい(笑)
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