※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

飛行機が離陸した瞬間、急病のフリをして戻らせるほど大切な急用とはなにか?

この冒頭のシーンだけでも、優れたセンスの片鱗をみることができる。

そして、ツアーの添乗員をだまし、タクシーの代わりをさせ、もう一人の友人をむかえに行く。

そのもう一人の友人も、何やら急いでいる。

ズボンを履くのも忘れるほど急いでいるのだ。

これほどまで緊急を要する用事は何か?

それは、ある人に会うためだったのだ。

飛行機を戻らせ、ズボンも履き忘れるほど、会う必要がある人物。

もう、この時点で視聴者は釘づけになってしまうのだ。

どんな魅力的な人物なのか?

構えて待つ視聴者。

そして、いよいよ主人公であるランチョーが登場する。

その登場シーンもインパクがある。

理不尽な先輩からのいじめに対して、ユーモアと知恵によって回避していくのだ。

これによって、あれだけ期待させた主人公のキャラクターの期待を見事に回収していくのである。

このように、「伏線」→「回収」が何度も繰り替えされ、毎分「こういう展開になるのか!」と爽快な気分を味わうことができるのだ。

そして、その伏線のほとんどが、視聴者に分かりやすく提示されるので、「そうなると思った!」を何度も体験できる作りとなっている。

これが実に気分が良い!

騙したり、裏切るような伏線ではなく、小学生でも読めるような伏線にあえてしたのだろう。

優しくヒントを置いてくれるので、ハラハラ感を保ちつつ、安心して楽しむことができる。

例えば、問題提起を引き起こす役のラージュー。

冒頭で『裕福な暮らし』を視聴者にみせてしまうことで、この弱々しい青年がランチョーによってどう成長していくのだろう?という視点で観ることができるようになる。

この時系列の小出しと、適切なヒントのばら撒きによって、『予測』しながら楽しめるという、実はかなり凄い技を使っている映画なのである。

 

ただし、そういった中でも強烈な演出を使うシーンもある。

例えば、ジョイ・ロボの首つり自殺だ。

これはインドの社会問題であり、明るいミュージカルから反転してジョイ・ロボが亡くなっているシーンは強烈だ。

こういったテクニックによって、社会風刺もしっかり取り入れ、メッセージ性の強い作品にもなっている。

「世間体なんて気にするな、自分の好きなことをしよう。成果は後からついてくる。きっとうまくいく。」

子供にも、親にも、すべての世代に向けたメッセージなのである。

 

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ランチョー役のアーミル・カーンは44歳?

本作の主役であるランチョー。

ランチョーは若々しい大学生なのだが、実はランチョーを演じたアーミル・カーンは当時44歳。

この役を演じたくて、かなり体を絞ったようだ。

また、肌を若々しくみせる為に、水を1日に4リットルも飲んだという逸話もある。

凄まじい役作りなのだが、このアーミル・カーンはインドでもトップクラスのスターなので、それくらいの努力は当然なのであろう。

 

ファラン・クレイシー=視聴者

この映画、主人公のランチョーはまるで導師である。

迷える人々に対して、真理を説いていく。

それは友達でも、校長先生でも同じように説くのである。

うまく行かない欠点を探す洞察力があり、みんなを最終的に幸せにしていく。

なかでも、親友の一人ファラン・クレイシーは視聴者に最も近い。

本当は写真家になりたいのに、親にエンジニアになるよう洗脳され続けてきたのだ。

やりたい事は明確なのに、外部要因によって、その道が閉ざされてしまう・・・

本当にやりたいことがあれば、それをやるべき

この非常に簡単ながら、非常に難しい問題が、映画のメインテーマなのである。

その答えはラストに描かれているが、ファラン・クレイシーが父を説得するところがボクは1番心を打たれた。

尊敬しているカメラマンに、アシスタントとして認められ、準備は整った。

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しかし、父を説得することを諦めかけてしまうのである。

そんな姿に、「もう手は差し伸べられている、あとは1人で親を説得するのだ!」と背中を押すランチョー。

そう、叶えたい夢への準備は誰でも全て整っている。

しかし、最後は自分1人でしっかり向き合い、その意思決定をする必要があるのだ。

クーラーを自分の部屋だけ取り付けてくれたり、様々な恩義がある両親。

その両親の期待を裏切るのは心苦しい。

ただ、そういう言い訳をしてしまうと、50年後に絶対に後悔するとランチョーは諭(さと)す。

ここ!同じような境遇の人、かなり多いのではないか!?

やりたい事をやるのが1番良いことは誰でも知っている。しかし!様々な環境によってそれが出来ないから苦しいのだ。特に両親に対しての罪悪感というのは強烈なブレーキとなる。

そして劇中では、生まれて初めて、ファランは父と真剣に向き合うのである。

「給料も少なく、貧しい生活になるかもしれない・・・でもカメラマンになった方が絶対に幸せだ」

ここで初めて子供の幸せについて気付く父。

今までは自分(父)からみた幸せを子供押し付けていたのだ。

それは学校の校長も同じで、親や教師がレールを決めるという社会に警笛を鳴らす映画でもあるのだ。

だからこそ、子供がいる親は絶対に観るべきであり、同時に子供も一緒に観ることで人生さえも変えてしまうパワーがある作品なのである。

 

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