※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

どんな世界でも『唯一無二』の存在は希少性が高まる。

その人の世界観が出せれば、他との差別化は容易だからである。

さて、本作『ビッグ・フィッシュ』だが、そんな唯一無二の世界観を持つティム・バートンの作品だ。

現実世界の少し隣を行くような独特の世界観は、とても心地よい異空間に視聴者を導くようである。

ファンタジーでありながら、極端な世界観ではないところが彼の得意とするテクニックなのだろう。

様々な形で『愛』を表現するティムバートン。

人造人間と少女の愛を描いた『シザーハンズ』。

起業家と少年の友情を描いた『チャーリーとチョコレート工場』。

そして、今回は父と子の物語だ。

 

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ビッグ・フィッシュのあらすじと感想

 

エドワードは人を惹きつける話ができる魅力的な人物だ。

その話はファンタジックであり、聞く者を心を奪う。

ただ、息子のウィルは、子供の頃からエドワードのファンタジックな話を聞き続け、いささかうんざりしている。

というのは、ウィルが大人になっていくと、それが大嘘だと気づきショックを受けるからである。

ウィルの結婚式のときも、エドワードが自慢の話術で招待客を楽しませていた。

自分の結婚式なのに、父に美味しい所を持っていかれたウィルは父と疎遠になっていく。

父の本当の姿がわからないウィルは、理解したい気持ちと、すぐに大嘘ではぐらかす父に怒りを覚えるようになってしまったのだ。

疎遠になったウィルとエドワードだったが、エドワードが病気で倒れたことを知り、実家にもどるようになる。

そんなエドワードだが、看病するウィルに対して、またファンタジックな過去の話をするのである。

なぜ、父は事実ではなくファンタジックな話をするのか?

ここが強烈な『引き』となり、ラストまで引き込まれてしまうのである。

 

ファンタジックな過去の話

エドワードは若い頃の自分の話をウィルに語る。

その話は、巨人が出てきたり、裸足で過ごす村に行ったり、サーカス団に入ったり、これまでと同じようなファンタジックな話だ。

しかし、父の荷物を整理していたときに、父と関係があった人物をみつけ会いにいくことになる。

そして、エドワードと関わった人物と話をし、父の話はすべてが嘘ではないと気づく。

少し誇張して話すことで、相手を楽しませ、ハッピーにしていたのだ。

 

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エドワードの葬儀で登場人物が全員集合

エドワードの葬儀では、今までホラ話だと思っていた登場人物が全員集合する。

ここで、どんな風に誇張して話していたのかがわかり、思わず微笑んでしまう。

普通の双子を、腰が繋がった双子にしていたり、巨人は本当に巨人だったり(笑)

そして、エドワードが息を引き取るときに、ウィルが話た物語。

老いて弱ったエドワードを川に帰すと彼は「ビッグフィッシュ」となり、元気に川を泳いで去っていった。

これほど綺麗なオチがあるだろうか?

自分や家族がどれほど愛されていたのか?最後はエドワードの人間的な深さに気づき、感謝と尊敬を息子は抱くのである。

悲しみと、感動と、爽やかさを同時に演出するラストは、まさに匠の技。

幻想的な映像美は、文字では表すことが不可能である。

こればかりは、作品でじっくり味わってほしい。

さすがティムバートン監督。ファンタジーを作らせたら彼の右に出る者はいない。

 

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