映画「ゼロ・グラビティ」の感想・ネタバレ（79点）圧倒的な孤独

※この記事には作品の感想（ネタバレ）が書かれておりますのでご注意ください。

宇宙空間に放り出されたらどうなるか？

終始無重力の中で、困難に立ち向かいながら地球への生還を目指すという少し単純なストーリー。

基本的には主役のサンドラ・ブロックと、ジョージ・クルーニーしか出てこない。

つまり、めちゃくちゃ『孤独』なのである。

宇宙という厳しく広大な空間の中で、ちっぽけな人間がトラブルを解決しながら生き抜くという、ちょっと単純な展開です。

困難→解決→困難→解決という、地球を舞台にしたら眠くなる展開ですが、これが宇宙空間だと話しが変わります。

思い通りにコントロールできない身体に加え、小難しそうな宇宙船と格闘したり、展開は単純でも飽きません。

この映画の良い点と悪い点は、初期の段階でオチが解ってしまうことだ。

自分達の宇宙船が壊れる

↓

ISS（国際宇宙ステーション）を目指す

↓

中国の宇宙ステーションを目指す

↓

地球に帰る

ここまでが、早い段階で見えてしまう。

だからこそ、途中のISSでの火災も、パラシュートのトラブルも、全て解決するという保証が出来てしまってしまう。

まぁ、だからこそ「安心して」観ることが出来るのも事実だ（笑）

ただ、解決できるという安心感があるにもかかわらず、終始ハラハラドキドキしてしまうのは、圧倒的な映像技術とサンドラ・ブロックの素晴らしい演技力によるものだろう。

この映画の主題は「あきらめない強い気持ち」といった、地球へ生還する為の人間の力強さであろう。

主人公はあらゆるトラブルに、多少心が折れながら立ち向かっていく。

最初は折れそうだった心が、娘への思いと、ジョージ・クルーニーの言葉などで成長していく。

ここで本来であれば、地球上での娘との思いでなどがフラッシュバックされるのだが、映画の世界観が壊れてしまう為それができない。

その点が、「絶対にあきらめない」という過去への決別が弱くなってしまっているのである。

娘がブランコなどで遊んでいるシーンがあれば、強い意志への感情移入できるが、そこが残念な部分だ。

サンドラ・ブロックが極限状態でジョージ・クルーニーの幻をみるところなども、地上での記憶がフラッシュバックされると、より強烈になるのだが、それが出来ない・・・

この映画、地球に到着してからもハラハラさせるから凄い（笑）

大気圏突入の迫力でいよいよクライマックスか？と思わせながら、最後に溺れさせようとするのだから詰めが強烈だ。

宇宙空間で常に酸欠状態だったのに、地球に帰っても水攻めである。

水中で宇宙服を脱ぐシーンは、観ている側も息を止めながら応援したことだろう。

そして、地球の空気を吸うサンドラ・ブロックの見事な表情・・・

アカデミー主演女優賞ノミネートも納得である。