LINEで送る
Pocket

※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

デンゼル・ワシントンがパイロット姿で凛々しい表情をみせる本作『フライト』のポスター。

このポスターを見て、デンゼル・ワシントンが凄腕テクニックで飛行機を操縦し乗客を救う映画だと想像する。

しかし、冒頭からイメージが覆されるのである。

これから飛行機を操縦する予定なのに、酒やドラッグを朝から利用しているのだ。

「なんだ!この映画は?イメージと全然違うやんけ!」と誰もが驚くと思う。

何ごともなかったように操縦席に座るデンゼル・ワシントン。

副操縦士は匂いなどで何となく察しているようだ。

客室乗務員の女性も「いつものこと」の様な表情をみせる。

パイロットのチェックなどしないものなのか?疑問を抱きつつ飛行機は離陸する。

この日の天気は最悪で、すぐに乱気流によって飛行機が揺れに揺れる。

しかし、ここで敏腕パイロットの演出が描かれるのである。

デンゼル・ワシントンは難なくこの乱気流を切り抜けるのだ。

そして、一仕事終わった余裕から、ウォッカを2本オレンジジュースに混ぜて飲むのであった。

この航空会社、怖すぎる・・・

 

スポンサーリンク

 

墜落を背面飛行で回避

ウォッカ2本を飲んで睡眠タイムのデンゼル・ワシントン。

しかし、急に飛行機が墜落しはじめる。

機体の一部が損傷したのである。

凄まじい急降下で制御不能となるが、デンゼル・ワシントンのとっさの判断により背面飛行を行う。

すると、機体はバランスを回復し見事胴体着陸を成功させるのであった。

これにより、少ない犠牲で墜落を回避し「奇跡のパイロット」とメディアが興味を出してくるのである。

 

保険の関係でアル中がバレる

操縦ミスか?機体の損傷か?保険の関係で罪のなすり合いとなる。

製造業者的には操縦ミスにして、責任を避けたいのだ。

そして、操縦ミスにする良い題材を発見する。それがデンゼル・ワシントンのアルコール依存症である。

墜落後、意識が戻らない内に血液検査を行っており、すでに酒とドラッグの反応がでている。

これが証明されてしまうと、当然「罪」となる。

死者も出していることから、無期懲役となる可能性も高い。

しかし、デンゼル・ワシントンの昔からの親友が、敏腕弁護士を付けてくれたのである。

この敏腕弁護士によって、血液検査を無効にできるのである。

後は、アル中とドラッグ依存がバレなければ、何とか切り抜けることが可能となる。

 

冷蔵庫のファンの音でスイッチが入る

敏腕弁護士のおかげで、事故責任を回避できる可能性が高くなる。

そして、国家運輸安全委員会の尋問に答えて終わりという段階まできた。

そんな尋問の前日、デンゼル・ワシントンはホテルに泊まって隔離される。

ここで一晩グッスリ眠って、明日の尋問を受ければ、もう責任を追求されることはない。

この1日だけ酒を我慢できればよいのだ。

しかし、尋問への不安からか、落ち着かなくなってしまう。

部屋のドアには敏腕弁護士が雇ったガードマンがいるので、外には出れない。

しかしアルコール依存症の嗅覚からか?別の部屋にいって冷蔵庫を探してしまう。

自分の部屋の冷蔵庫にはとうぜんジュースしか置いてないが、別の部屋の冷蔵庫ならお酒があるかも、という無意識の行動をとってしまうのだ。

この時、冷蔵庫のファンの音を視聴者に聞かせるのだが、これが素晴らしい演出である。

そして、冷蔵庫を開けるとキラキラしたアルコールが並んでいるのだ。

宝箱を開けた海賊のように目が輝くデンゼル・ワシントン。

1瓶手に取って、開封し、匂いだけ嗅ぐ。

何とか我慢して部屋を出ようとするが・・・

あぁ~・・・手が伸びてしまうのだ。

堤防が決壊したような勢いで飲みまくった痕跡を残すデンゼル・ワシントン。

朝部屋を訪れた敏腕弁護士は愕然とするのであった。

 

スポンサーリンク

 

尋問での告白

ヘロヘロ状態のデンゼル・ワシントンであったが、友人がドラッグを処方することで冴える。

これにより、何とか尋問を受け答えできる状態となった。

国家運輸安全委員会の尋問はどんどん進んでいき、敏腕弁護士が予定した通りになった。

これで責任追及は終わるかと思えた最後の質問。

乱気流によりドリンクサービスは停止していたはずなのに、ウォッカの瓶が2本捨てられていた件を追及される。

敏腕弁護士が描いたシナリオは、亡くなった客室乗務員のせいにすることであった。

その亡くなった客室乗務員はデンゼル・ワシントンの恋人でもあった。

また、背面飛行時に席から落ちてしまった子供を助けたことによって、自分はシートベルトを着けられずに亡くなったのだ。

何度も嘘をついてきたデンゼル・ワシントンも、子供を助ける為に亡くなった恋人のせいにすることはできなかった。

彼女のせいにして責任を逃れることはできなかったのである。

この一点集中攻撃により、ここまで1つも感情移入できなかった主人公に対して、初めて同情するのである。

「これほど同情できない主人公はいるか?」と思うほどダメダメだったのに、このシーンで一気に泣ける映画となってしまうのだ。

ラストに爆発させるテクニックはお見事である。

そして、全てを洗いざらい話、依存症と向き合うのであった。

予告やポスターではあえて依存症について触れない戦略だったようだ。

冒頭からイメージが覆され、その裏切りがどんどん続く展開となり、ラストで一気に畳み掛ける。

見応えのある映画であり、お酒が好きな人は少し注意が必要な映画でもある(笑)

 

スポンサーリンク

 

LINEで送る
Pocket