※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
5次元の並列世界を描いた、とんでもない作品が「ミスター・ノーバディ」だ。
しかも、その表現方法としてラブストーリーを選んだ所がポイントだ。
こういった映画の場合、わかりにくく難解で、途中で飽きてしまうような作品が多い。
しかし、ミスター・ノーバディは実にわかりやすく作られていて、哲学的に並列世界を表現している。
線→面→空間という3次元世界に我々は住んでいる。
ここに時間を加えたのが4次元の世界である。
さらに、その時間軸が無数にある状態が5次元なのである。
このミスター・ノーバディは、5次元の世界で話が進む、不思議な体験ができるかなり斬新な作品なのである。
無数の時間軸が並列して進む。
そして、その世界をつくっているのが主人公ニモの少年時代なのだ。
この映画は『解釈』が多数用意されており、正解は観た人の数だけあることになる。
まさに5次元だ(笑)
なので、明確な正解はない。
118歳のニモが9歳のニモを作ったかもしれないし、9歳のニモが118歳のニモを作ったのかもしれない。
全て並列で話が進むため、何を基軸にすればよいのかも視聴者に委ねられている。
スポンサーリンク
9歳のニモが本当の世界?
9歳のニモを基軸にすれば、すべて未来の話となる。
どんな選択して、どんな人生を送るのか?
それが無数に広がっている状態だ。
両親の離婚や、恋愛など、人生の分岐点において、様々な選択肢を考慮している世界となる。
つまり、9歳のニモの「もしも」が情報空間に広がり、それが物理空間を作っていることになる。
118歳のニモが本当の世界?
118歳のニモを基軸にすると、すべては過去の話となる。
118歳になったニモが、過去の選択を回想する話だ。
ただ、すべての選択は事実として語られているし、9歳のニモの想像の世界と言っているので、最終的には9歳のニモが本当の世界になる。
119歳のニモは、9歳のニモの想像上で存在しているし、9歳のニモも119歳のニモの中で存在している。
すべてが並列に起こっている世界なのである。
また、そうした「どれが正解」という答えさがしの映画ではない。
並列世界を楽しめばよいのである。
スポンサーリンク
どれも選択しなかった可能性も?
『選択したら他の可能性が消えてしまう。選択しなければ無限の可能性が残る』
『もしもの人生もすべて真実の人生だ』
これらの言葉から、『もしも』だけを考え何も選択しなかった可能性もある。
118歳のニモが、もしアンナと結ばれていたら、最後に「アンナ」とは言わなかったはずだ。
ラストの逆再生
118歳のニモが死んだ瞬間、時計の針が止まり、宇宙の自転も止まった。
そこから逆再生がはじまり、時間が逆に進んでいく。
ここが最大のポイントである。
ニモが死んで宇宙が止まるということは、ニモに対しての宇宙だったわけである。
つまり、118歳のニモの世界というのは、ニモだけの世界だったことになる。
そして、逆再生でも無数の選択肢が展開されている。
車で川に突っ込んだニモ。
バイクで事故ったニモ。
アンナと結ばれているニモ。
118歳のニモがアンナを選択したはずなのに、逆再生でも無数の選択肢が展開されているのである。
そして、最後は9歳のニモとアンナが川で遊ぶシーンで幕を閉じる。
よって、全ては9歳のニモが生み出した無数の宇宙と解釈することができる。
細かいヒントが散りばめれている
難解な映画だが、細かいヒントは多く散りばめれれている。
家具・小物・服装・髪型などなど、解釈の手助けとなるヒントは意外に多い。
2回、3回とみると、今まで見えなかったモノが見えるかもしれない。
監督も1回観ただけでわかる作品にはしていないと思うので、この世界観が好きな人は、なんども観てみるとよいだろう。
スポンサーリンク