※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

その時は気付けなかった愛情の深さを知った時、考え方や性格というのは良い方向へ変わる。

それは父からの愛情であったり、兄からの愛情であったり、ある地点に行かないと気づけない愛情というものがある。

それを見事に表現しているのが本作『レインマン』だ。

主役の一人であるチャーリー(トム・クルーズ)は、高級車のディーラーをしている。

しかし、経営状況は悪く、自転車操業的な状態である。

そんな中、チャーリーは時には相手を騙し、詐欺スレスレでピンチを切り抜けようとする。

この様に、冒頭ではチャーリーをかなり悪く演出している。

ほとんど悪党である。

しかし、このチャーリーの経緯の背景などをしっかり描くことで、ラストに向けてとんでもない感動が押し寄せてくるのである。

 

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あらすじ

高級車のディーラーとして廃業寸前のチャーリー(トム・クルーズ)。

客をなんとか口車に乗せ、首の皮一枚で繋がっている状態である。

そこに飛び込んだのが、疎遠となっている父の訃報であった。

母とは死別しており、何かと厳しく育てられ、一片も愛情など感じたことがない父であった。

だからこそ、高校卒業後は一人で生き抜いてきたのである。

葬儀に参加したチャーリーであったが、なんと父からの遺産は遺言状により車一台とバラの花壇だけであった。

しかし、300万ドルの遺産がまだ残っている。

その300万ドルは聞いたこともない名前の人物が相続すると知るのであった。

 

相続人レイモンド

300万ドルの相続人はレイモンド(ダスティン・ホフマン)という名前の男性であった。

レイモンドは重度の自閉症であり、ずっと病院で暮らしていた。

しかし、このレイモンドは実はチャーリーの兄だったのだ。

自閉症の兄には300万ドル、そして自分には車一台。

この様な待遇の違いに怒りを表すチャーリー。

そこで、何とレイモンドの後見人となり病院からつれだして、父の弁護士と交渉しようと企むのであった。

この様に、ほとんど誘拐という感じでレイモンドを連れ出すチャーリー。

このやり方にチャーリーの婚約者も呆れて離れてしまうのであった。

 

父の愛情

遺産の違いに憤慨していたチャーリーであったが、実はもう一つ怒る原因があった。

それは、なぜ兄がいることを教えてくれなかったのかだ。

兄がいることを秘密にされていたのが、実は遺産よりも傷ついていたのだ。

この辺りからチャーリーというキャラクターの人間味が表現されていく。

遺産よりも兄と出会えて嬉しい、という感動的な展開へとなっていくのである。

そして、実はチャーリーとレイモンドが一緒に暮らしていたことを少しずつ思い出していくのだ。

レイモンドは自閉症でありながら、幼きチャーリーを可愛がっていたこと。

チャーリーが泣いていた時は、一生懸命あやしていたこと。

しかし、チャーリーが3歳のころ、お風呂を入れようとしたレイモンドが熱湯を入れてしまいチャーリーを火傷させてしまったのだ。

この様な経緯があったからこそ、父はレイモンドを施設に預けたのだった。

つまり、父はチャーリーを守ろうとしてくれたのだ。

しかし、それは同時にもう一人の子供を施設に預けることになってしまう。

父も非常に悲しい選択だったに違いない。

だからこそ、自分(チャーリー)のせいでレイモンドを施設に預けたという気持ちにさせたくない為、兄がいることを黙っていたのであった。

こうした父の愛情を少しずつ理解していくチャーリー。

しかし、それはレイモンドと生活することで得られたのである。

 

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兄の愛情

この様に、自分(チャーリー)が小さかった頃、よく面倒をみてくれたレイモンド。

想像の話だと思っていた「レインマン」こそレイモンドだったのだ。

しかし、チャーリーを可愛がろうとすればするほど危険も増えてくるというジレンマ。

チャーリーの安全を考えた父により、レイモンドは施設で暮らすことになってしまうのだ。

そして、この事を知ったチャーリーは遺産など考えなくなり、本気でチャーリーの後見人になりたいと願うようになるのだ。

遺産を狙っていたチャーリーが兄との記憶を思い出しながら、兄弟愛や親子愛を理解していく過程が本当に素晴らしい。

また、電話帳を眺めただけで相手の電話番号を覚えたり、落ちたつま楊枝の本数を瞬時に数えたり、天才的な才能を持つのも事実。

この様に、自閉症という病気であっても特別な才能を持つ人が多いことも作品中に表現されている。

 

ダスティン・ホフマンもトム・クルーズも素晴らしい!

本作でアカデミー賞主演男優を受賞したダスティン・ホフマン。

これは見事としか表現できないほど素晴らしい。

クイ気味にいう台詞のタイミングなど完璧だ。

また、動作ひとつひとつも見事な演技である。

動作・目線・台詞のタイミング、この徹底したリアリティにより『レインマン』は完成している。

ただ、それを支えるトム・クルーズもやはり凄い。

ダスティン・ホフマンが引き出す「イライラ」に対して、見事に「怒り」を表現し、視聴者に自閉症患者の苦労を裏表なくリアルに表現している。

そして、そこから接し方や、愛情表現など、2人の絆を見事に演じている。

親子愛・兄弟愛というテーマを押しつけがましくない感動で包んだ傑作映画である。

 

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