※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

地元(家族)から離れた所で生きてみたい、そんな青春時代は誰にでもあったはずだ。

しかし、親からすれば自分の手元を離れてしまう不安・心配が優先される。

だからこそ、あの手この手を使って我が子を説得させ、自分の見える範囲に置いておきたいのだ。

子供が可愛いければ可愛いほど・・・

本作『レディバード』では冒頭からこの葛藤をスリリングに演出している。

地元から離れたニューヨークの大学に通いたい主人公クリスティン(レディバード)は、地元の大学に入れようとする母と車の中で口論となり、走っている車から飛び降りてしまう。

自分の信念を曲げない力強さなのか?単なる我がままなのか?このショッキングなシーンにより、レディバードの性格がたった数分で視聴者にわからせてしまう演出は見事だ。

 

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理想と現実の見せ方が絶妙

この映画は「青春あるある」をメインに作られているが、そういったモノを楽しんだり懐かしむものではない。

中心となるメッセージは「理想と現実」であろう。

例えば、校内でのミュージカルに出演が決まった時、同じ舞台に立つダニーという男性に恋をするのだ。

また、ダニーは裕福な家庭であり、将来は理想的な家庭を手に入れると想像するレディバード。

また、「大切に想っている」という気持ちから、すぐに肉体関係に向かわずゆっくり愛を育む姿勢もレディバードにとって理想的な展開であった。

そんな青春に幸せを感じるレディバードであったが、ミュージカルの打ち上げで女子トイレが混雑していたため、たまたま入った男子トイレでダニーが男とキスをしていたのだ。

あれほど理想的だったダニーだが、現実はショッキングなものだった。

そして今度はバンドマンのカイルに恋をするレディバード。

自分の芯を持っており、皆がバカ騒ぎをしている時も、一人自分の世界に入っているような性格だ。

この様に、とても魅力的にみえるカイル。

カイルは「童貞」だとレディバードに告白し、レディバードも初めてなので、(レディバード)にとっては理想的な肉体関係であった。

しかし、実際はカイルは初めてではなく、その場のノリで「童貞」と言ってしまったという。(ただし、あの早さは恐らく本当に童貞だった可能性もあり。恥ずかしさやテレを隠すために嘘をついた可能性もある)

どちらにせよ、カイルの嘘によってレディバードは傷つくのであった。

理想的なバンドマンは、現実はたいしたことのない男だったのである。

この様に、思春期の「理想と現実」を青春あるあるによって見事に表現しているのである。

 

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大切だからこそすれ違う

本作は母と娘の物語であるが、どちらも正しいからこそ面白い。

娘を大切に想うからこそ引き留めたい母。

しかし、様々なものに挑戦したい娘。

どちらも正しい。

この辺の答えがラストになると分かるのだが、その前に重要なワンクッションがセンス抜群なのである。

それが親友ジュリーの存在だ。

クラスで最も仲のよいジュリーであったが、レディバードが彼氏や新しい女友達ができると離れていってしまう。

しかし、前述したとおり様々な理想と現実を経験することで本当に大切なことを知ったレディバードは、高校最後のダンスパーティーをジュリーと楽しむのである。

このジュリーはレディバードの母と被り、ラストをより一層盛り上げるスパイスとなっている。

レディバードがニューヨークへ行く当日まで無視し続ける母。

いざ飛行機に乗ると、溢れる想いからとめどなく涙を流すのであった。

そして、母は書いては捨て、書いては捨てを繰り返した手紙を書いていた。その手紙を父がゴミ箱から拾い、レディバードに渡すのである。

この深い愛情にやっと気づくレディバードは、本名を名乗るようになり、育ててくれた親、そして地元への愛を留守番電話に残すのであった。

 

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