※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
「天才数学者の秘密」というサブタイトルの通り、まさに天才を描いた作品だ。
なぜ天才なのか?
後の『コンピューター』を作った人物だからである。
今こうしてパソコンでブログを書くのも、ネットにアップするのも、この天才数学者の存在がなければ出来なかった可能性があるほどだ。
また、最大の功績は戦争の終結を早めたからである。
主人公のアラン・チューリングは、第二次世界大戦中にドイツ軍の暗号(エニグマ)を解読すべく、コンピューターの元祖となる『マシン』の開発にチャレンジする。
暗号の解読には、仮想機械(コンピューター)が必要だったからである。
このエニグマ解読に奮起する、主人公チューリングと暗号解読プロジェクトのチームが中心となり、物語が進んでいくのである。
ただ、第二次世界大戦、当時のイギリス、ソ連との関係などなど、複雑な要素も多く、難しいところも多い。
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なぜ政府はチューリングの功績を隠したのか?
最終的にチューリングと暗号解読チームはエニグマを攻略する。
これにより、ドイツ軍の情報が筒抜けとなり、戦争を優位に進めることができた。
ただし、ここで重要なポイントがある。
『エニグマの解読』が成功したことをドイツ軍にバレてはいけないのだ。
もし、解読したことがドイツ軍にバレてしまっては、違う暗号に変えられてしまう。
すると、苦労して攻略したエニグマ解読が水の泡となってしまう。
だからこそ、全てを読んではいけないのである。
例えば「明日の12時に○○地点を攻撃する」という情報を得たとする。
だからこそ、それを回避するのは簡単だ。
しかし、これがずっと続いてしまったらどうだ?
エニグマの解読がバレてしまう。
だからこそ、統計をとって、なるべく少ない犠牲を出しながら、大きな成果がでるようにしなければならない。
つまり、攻撃されるとわかっていながら犠牲を出さなければならないのである。
それは『見殺し』を意味するのだ。
このエニグマ解読により、イギリスは戦争に勝利する。
しかし、戦争を有利にするために『見殺し』にしてしまったのも事実だ。
チューリングの功績を表にだすことは、見殺しにしてしまったことを公表することにもなる。
そんなことをすれば、被害にあった遺族や国民はどう思うか?
内戦が起こる可能性もある。
だからこそ、チューリングや暗号解読プロジェクトの資料をすべて焼き払ったのである。
チューリングがいなかったら、もっと被害が出ていたのに、生前それが評価されなかったのはさすがに同情してしまう・・・
しかも、同性愛による有罪判決で犯罪者となってしまったのだ。
没後20年でようやく暗号解読の功績が知られるようになり、没後59年でイギリス政府より正式に恩赦された。
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ソ連のスパイであるケアンクロス
実は暗号解読チームにソ連のスパイがいた。
それが、ケアンクロスという人物だ。
中盤でチューリングはケアンクロスだけに心を許すシーンがある。
自分が同性愛者だということを打ち明けるほど信頼していた男だったのだ。
スパイの暗号文として使われた聖書の一節と、ケアンクロスの机にあった聖書のページが一致してしまうのである。
偶然それをみつけたチューリングだったが、自分の正体をバラしたら、チューリングの同性愛もバラすと脅迫されてしまう。
ただ、この時は妥当ドイツということで協力し合う仲だと強調する。
また、MI6(秘密情報部)のスチュアートもケアンクロスがスパイであることを知っていた。
では、なぜスパイを黙認していたのか?
イギリスとソ連は協力関係にあったので、イギリスの不利になる情報は潰し、逆にイギリスの有利になる情報をねつ造して送っていたのである。
これは作品中でも表現されていて、ケアンクロスがソ連に情報を送ろうとした郵便物を密かに回収し、別の情報を送っていたのである。
つまり、ソ連に対しても偽物の情報を流し、もし敵になった時でもイギリスが有利になるような情報操作をしていたわけだ。
さすが天才軍団を束ねるMI6(秘密情報部)。抜け目がない。
ラストについて
チューリングは最終的に自殺してしまう。
ただ、これも「事故説」があるので、謎は残る。
実際にエニグマ暗号解読に関わったのは7000人程度を言われている。
チューリングをはじめ、この人達はエニグマについて語れなかったので、戦時中は「逃げ回っていた」というレッテルが貼られてしまう。
それにより、戦後は職につけなかったり、かなり不遇な思いをしていたようだ。
そんな状況の中、同性愛の罪で犯罪者となってしまい、ホルモン療法による化学的去勢など、1番の功労者にも関わらず酷い扱いを受けている。
自宅で作っていたマシーンも『クリストファー』と名付け、初恋であったクリストファーを重ねる回想は泣ける。
『誰も予想しなかった人物が誰も想像しなかった偉業を成し遂げる事だってある』
当時クリストファーが語ったセリフが余韻を残し、作品は終了するのである。
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