※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
クリント・イーストウッドの映画は苦手だ。
重く、悲しく、落ち込む気持ちになる事が多い。
ただ、間違いなく偉大な俳優であり監督だ。
彼の偉業は凄まじい。
これだけ映画という芸術に貢献した人間はいないであろう。
今回の「ミリオンダラーベイビー」。
やっとクリント・イーストウッドの映画で楽しめる♪とルンルン気分だった。
もう若くはない女性ボクサーが、根性で名トレーナーとタイトルを掴む!
徐々に勝ち上がり、タイトル戦では高額報酬が約束される。
まさに「ミリオンダラーベイビー(百万ドルの価値のある彼女)」なのだ。
解り易く、ハングリー的な要素もあり、やっとクリント・イーストウッドの楽しめる映画が観れた。
と、思ったらとんでもない!
やはりメッセージ性の強い、クリント・イーストウッドの映画なのである。
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ミリオンダラーベイビーというタイトルの意味
凄まじいセンスのタイトルである。
この人は、まさに映画の為に生まれてきたような男だ。
映画のタイトルも内容も、スポーツ根性の娯楽映画だと安心した途端、まさにカウンターの一発を入れてくる。
「ミリオンダラーベイビー」という意味の解釈が見事に反転するのである。
最初は内容の通り、ボクシングで「百万ドルの価値のある彼女」。
しかし、後半では自分の娘以上に「百万ドルの価値のある彼女」になるである。
そして、まさにそれこそ「モ・クシュラ」なのだ!
「愛する人よ、お前は私の血」という意味で、それが「自分の娘のように価値がある彼女」ということを表現している。
なので、映画のタイトルは本当は「モ・クシュラ」でもよかったはずだ。
重いメッセージもあり、内容とも一致する・・・
しかし、ここを「ミリオンダラーベイビー」にすることで、見事に前半と後半のコントラストを表現し、視聴者にカウンターを喰らわせ、問題提起をやってのけたわけだ。
「モ・クシュラ」であったら、観る前に絶対に構えてしまう。
映画を極めた人は本当に凄い。
感動?後味が悪い?
この映画を観て、感動する人もいれば、後味が悪いと感じる人もいるだろう。
解釈も人それぞれだし、それが映画であり、監督の意図でもある。
全身麻痺になったマギーは「ここまで出来て満足」という意思を伝える場面がある。
実質チャンピオンでもあるし(相手の反則により)、膨大なファイトマネーも手に入れた。
ただ、本当に未練はなかったのか?
それは「ノー」だ。
家族、特に父の面影を常に探している。
そんな中、最後に「モ・クシュラ」の意味を伝えるシーンは感動的だ。
そして、父との思いでの詰まったレモンパイのお店で幕を閉じる。
まったく無駄がなく、散りばめられた伏線を見事に回収して終わる。
父のぬくもりを探していたマギー。
娘と和解したかったフランキー。
2人の渇望が魂で繋がった時、命を超えた絆が生まれたのだ。
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