※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

今回レビューする映画は「この世界の片隅に」という題名で、第2次世界大戦をテーマにしたアニメです。

戦争アニメといったら「はだしのゲン」「火垂るの墓」などが代表的なイメージだと思います。

たしかに、この両作品とも素晴らしい出来栄えで、かくいう私も号泣いたしました。
でも、「この世界の片隅に」は、これら戦争アニメのレジェンドをも凌駕する作品でした。

まさに、戦争アニメの金字塔を打ち立てたといっても過言ではないと思います。

だって、あの強面でうるさ型の井筒監督をして「衝撃を受けた…」と大絶賛していたぐらいですから。

この映画を採点すると、98点です!100点でも良いぐらいですが…

 

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声優のんが素晴らしい!

物語の内容としては、呉の街に嫁いできた少々どんくさい18歳のすずが、穏やかな空気を纏い日常を送る微笑ましい姿や、やがて戦火に巻き込まれていく人々の悲惨な光景を描いた作品です。

このすずの得も言われぬ空気感を演出しているのは、能年玲奈改め“のん”が声優を務めていたからではないでしょうか。

最初、のんが声優をすることに正直、違和感がありました。

本当に大丈夫か?と…

某芸能界のドン率いる大手プロダクションを敵に回し、干されていたのんを抜擢した片渕須直監督の審美眼に驚愕するとともに、感謝の言葉を述べたいと思います。

でも、もし、のんがあのまま順風満帆に芸能活動を歩んでいたとしたら、この作品で声優をすることはなかったかもしれません。

そう思うと、人間万事塞翁が馬というのは真理だと感じ入りました。

そして、この作品が我々に訴えかけるリアリティは、片渕監督の丹念な映画作りからきています。

往時の呉の街を忠実に再現するため幾度となく東京から広島まで足を運び、自分の足で実際に街を歩き、様々な資料に目をとおし綿密な調査を行ったという話を聞いて、得心いたしました。

 

堪え切れないほどの悲しみ

映画の後半になると、ほがのぼのとした作品の空気感が一転し、戦争の凄惨さに支配されていきます。

人前では泣かない私が、堪え切れずに泣きそうになったシーンがあります。

それは姪っ子の晴美が亡くなるシーンです。

晴美は、すずにとても良く懐いており、やさしく愛らしい女の子でした。

その晴美が、すずの目の前で時限爆弾の爆発で吹き飛ばされました。

手を繋いでいたすずの右腕もろとも…その一瞬の悪夢。

幼い晴美の死もさることながら、自分の腕ごと最愛の姪っ子を失ったすずの気持ちを思うと言葉もありません。

エンドロールが流れる中、映画館に鑑賞者の感涙にむせぶ声がこだましていました。

となりのトトロ以来となるアニメ映画でのキネマ旬報ベスト1に輝いたこの名作を、私は終生忘れることはないでしょう。

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