※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

かつてトップレスラーであった主人公ランディを演じるミッキー・ローク。

公開当時50歳を超えているはずのミッキー・ロークであるが、この体作りには頭が下がる。

現役レスラーのような体は説得力十分であり、時代の流れに逆らえない老レスラーを見事に演じている。

内容は、ドル箱スターだった全盛期から、すでに20年が経ったベテランレスラーの話である。

体のあちこちが弱っているのだが、入場時の歓声ですべてが吹っ飛ぶのである。

しかし、それを支えるのは鎮痛剤や、ステロイドなどの薬物。

強靭な肉体を持つランディだが、すでに体は限界だったのである。

そして、ついに試合後倒れてしまうのだ。

 

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プロレス好きにはたまらない

本作『レスラー』は、かつてないほどのプロレスの裏側を描いている。

例えばレスラーの控室では、全員が集まっている場でプロモーターが流れを説明する。

すると、レスラー同士で仲良く試合の運びを決めていくのである。

ゴール(フォール)から逆算して、どのタイミングを合図にフィニッシュ技を仕掛けるか?などなど、この舞台裏は非常にリアルである。

 

CZWのネクロ・ブッチャーを起用するセンス

そして極め付けは、伝説的なデスマッチファイターを登場させたことだろう。

作品の中でランディとデスマッチを繰り広げたのは実在するプロレスラー、ネクロ・ブッチャーである。

CZWという団体で活躍し、日本では大日本プロレスなどにも参加した。

その壮絶なデスマッチファイトは凄まじい。

ガラス・有刺鉄線・画鋲・ホッチキスなどなど、ヘタすると本当に死んでしまうようなデスマッチを展開するのだ。

ボクはこの試合が、この映画で最も重要な部分だと思っている。

まず、デスマッチファイターというのは「割に合わない」。

命を削るような戦いをするにもかかわらず、当然万人受けしない。

その結果、血だらけになるのにファイトマネーも少ないのである。

それに比べ、WWEなどのマイクを中心としたエンタメプロレスはどうだ?

なるべく危険を避け、汗をあまりかかず、会場を沸かし盛り上げる。

そして受け取るファイトマネーも桁違いの額なのである。

物語の中でランディは若いレスラーに、そういった頭で戦うだけの団体には行くなという助言をする。

このように、不器用な男の生き様を丁寧に描いていることが素晴らしい。

ぶっちゃけ、映画の中でランディと対戦する相手をWWEの現役レスラーにすればマーケティングには成功したかもしれない。

しかし、万人受けしないホームレス姿のデスマッチファイターであるネクロ・ブッチャーを起用したことにより、とんでもない程の説得力を生み出したのである。

 

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引退後のイベント

心臓の手術をして引退を決意するランディ。

引退を聞きつけた昔からの仲間に、引退レスラーのイベントに参加するよう提案される。

そこには、昔からの仲間が数人集まっていた。

それぞれ昔のDVDやビデオなどを個人で販売し、収益化を目指すイベントであった。

しかし、訪れるお客さんは数人程度。

しかも、松葉づえが必要だったり、ほとんどのレスラーが何かしらの後遺症を抱えているのだった。

このシーンは非常にリアルである。

昔どんなに人気があったレスラーも、引退すればスグに忘れられてしまうのだ。

社会復帰もままならない状態で、こういったイベントに頼るしかないのである。

しかし、お客は全然来ないという現実・・・

この場面をドキュメンタリー風にした映像センスは素晴らしい。

 

ラストのラム・ジャム

ステロイドや鎮痛剤などによって過剰な負担を体にかけ続けていたランディ。

ネクロ・ブッチャーとのデスマッチの後、控室で意識不明となってしまうのであった。

心臓が限界になっており、もうプロレスをすることは不可能と医者から告げられるのであった。

そんな中、徐々に引退を受け入れるランディ。

今まで迷惑をかけた娘ステファニーと和解を試みるのであった。

最初は抵抗していたステファニーであったが、今度こそ父親として接したいと強く思う気持ちが伝わり、2人はもとの親子の関係を取り戻すかにみえた。

ステファニーと食事の約束をしたランディであったが、プロレスへの想いが捨てきれずたまたま会場に入ってしまう。

久しぶりの会場の熱気を体感し、ハイになってしまったランディは、バーで知り合った若い娘とハッスルしてしまい、すっかりステファニーのことを忘れてしまうのだ。

ステファニーと親子関係に戻れる最後のチャンスを失ってしまったランディ。

そして、追い打ちをかけるようにスーパーでのバイト姿をファンに見られ動揺し、自暴自棄となり仕事も辞めてしまう。

全てを失ってしまったランディだが、プロレス会場だけは自分を受け入れてくれるのであった。

そして、会場に集まるファンこそ本当の家族だと心から思い、復帰をするのである。

心臓に負担をかけてはいけないと医者からも注意されていたランディであったが、ラストはラム・ジャムを決めるためにトップロープから飛ぶのであった。

その後、どうなったのかは描かれずエンドロールとなる。

 

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