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※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

本作『インサイドマン』はエンターテイメントをメインとした娯楽作品である。

「銀行強盗の謎解き」が中心となり、スリリングさやイライラ感は抑え気味となっている。

その代わり、犯人(クライヴ・オーウェン)と警察(デンゼル・ワシントン)の会話のやりとりは超一流。

台詞のセンスが半端ないのだ。

だからこそ、よくある立て籠もり映画のように人質が命を懸けて抵抗したり、下っ端の警察隊が興奮して無理な強行突破などの「イライラシーン」はない。

通常、立て籠もりモノはこういった「イライラ」を小出しにし、その反応として「ドキドキ感」を視聴者に与える。

本作ではそういった小手先のテクニックを一切排除し、「極上のアイディア」に光が集まるように設計されている。

その「極上のアイディア」というのが銀行強盗のトリックである。

冒頭で主役のクライヴ・オーウェンは語る。

「なぜ銀行強盗をしたのか?いいアイディアが思いついたからだ」

これはそのまんま脚本家の意見だと思わる(笑)

 

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わからない点の解説

この様に、本作はかなり「センス」が良い。

サスペンスでは必須要素であるイライラ・ドキドキを封印し、そういったテクニックを使わずにキャラクターに魅力を持たせている。

だからこそ、ストーリーも白黒つくようにはなっていない。

あえて明確な答えを出さないまま終わらせてしまうのだ。

しかも、それが強盗の動機の真相だから凄い。

動機の真相を解明させないまま終わらせてしまうのだ。

だからこそ、こういった脚本家の「オシャレ」が嫌いな人も多いと思われる。

確かにモヤモヤが残ってしまうと思う。

・なぜ、犯人は会長の貸金庫の秘密を知ったのか?

・会長はなぜ証拠となる書類を残して置いたのか?

・14万ドルの小切手紛失の真相は?

この辺の明確な答えは最後まで出てこない。

また、犯人グループの正確な人数なども明確には描かれていない。

ラストに登場した犯人グループの他にも、紛れ込んでいた仲間がいるかもしれない。

逆にそうでないとおかしい描写もある。

こういった明確な答えは出さないが「なんとなく察しがつく」という演出が素晴らしいのである。

白黒はっきりさせるのではなく、なんとなく察すればよい作品なのである。

なぜなら、「いい銀行強盗のアイディアが浮かんだ」だけだから。

よって、この極上の強盗アイディアを楽しめれば、後はおまけと考えた方が健全であり、脚本家の真意を読み取ることでもあるのだ。

 

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わからない点の考察

(↑携帯電話を家に忘れてきたと嘘をついた行員も、見せしめ役・貸金庫番号の手掛かり・銀行の内部事情などから共犯の可能性が高い)

この作品の「わからない」所は、貸金庫の中身であろう。

貸金庫の中身には「戦争犯罪に関する資料」が保管されていたのだが、その貸金庫の持ち主は銀行のオーナー。

作品の中で、「ナチスによってユダヤ人の財産が没収されたが、その時に私腹を肥やした人物がいる」とあり、流れで解釈するとオーナーの事だと誰もが思う。

しかし、ここで疑問が生じる。

なぜ、そんな重要な証拠となる資料をすぐに処分しなかったのか?

それを残しておけば自分が不利な立場になるのはわかっていたはずだ。

この「戦争犯罪に関する資料」によって、銀行を設立し富を増やしたという演出はある。

しかし、完全に黒幕だという明確な描写はないのだ。

ここがスムーズに進んでいれば、これほど難解な作品にはならなかったと思う。

そこで、処分しなかった理由を考えみたいと思う。

 

①悪魔になりきれなかった。

ナチスに加担し富を増やしたオーナーであったが、罪の意識にさいなまれ、その罪を忘れない為に処分しなかった。

 

②後に被害者へ償おうとした。

被害者の遺族へ償うため、資料をしっかり残しておいた

 

③私服を肥やした人物を強請っていた

実はナチスに加担していたのではなく、加担して私服を肥やしていた人物を強請っていた。資料はそのナチスに加担した自分を示す証拠だった。

 

④戦利品として保管していた

自分が富を築いた記念品として大切に保管していた。

 

他にも、処分しなかった動機はあると思われるが、判断するのは観終った自分次第なのである。

真っ黒、というよりもグレーな感じで描かれている微妙なニュアンスで、色々考察するしかないのである。

 

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演出が超絶妙

『インサイドマン』は本当にセンスが絶妙の映画だ。

黒幕や真相を明確にしなくても楽しめるという裏ワザ的な設定。

そして、冒頭の主人公と、途中途中で流れる解放後の取り調べシーン。

小出しで解放後を出すあたり、並みのサスペンスではない。

「なんで人質となった人達が取り調べを受けているのだろう」という、強烈なフックと「ということは、まだ犯人は捕まってないのか?」という事実を同時に演出するのだ。

また、このシーンにより犯人グループは人質に紛れて脱出する計画というのもわかる。

そして、この演出は後にとんでもない効果を生み出す。

例えば、警察であるデンゼル・ワシントンと犯人であるクライヴ・オーウェンが会話をするシーン。

「おいおい、こんなに声を聞かせていいのか?」とハラハラしてしまう。

なぜなら、もし人質に紛れて脱出しても取り調べで声がバレてしまうからだ。

この辺は本当にうまい。

あえて解放後の取り調べシーンを先にみせることで、こういった心理的なスリルを味わせてくれるのだ。

白黒ハッキリさせたい人には向かない作品かもしれないが、新感覚のサスペンスを味わいたい方には非常にオススメしたい作品である。

 

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