※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
カンフーとサッカーを組み合わせた映画は実は過去にもあった。
1983年の香港映画である『チャンピオン鷹』だ。
ユンピョウが主演であり、カンフーとサッカーを組み合わせた内容は当時の少年たちを虜にした。
当然CGなどもなく、ほとんどが出演者の技術によってトッキーなプレーを演じていたのである。
そして、それから約20年後に同じコンセプトの映画が作成される。
それが『少林サッカー』である。
しかし、本作は『チャンピオン鷹』の二番煎じではない。
全てが高クオリティで展開される見応えのある映画となっている。
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コメディの完成度が高い
本作はコメディがメインとなっているが、笑いの要素がかなり面白い。
これは監督のセンスなのだろう。
国が違うのに、これほど面白いシーンが取れるのは本当に凄いことだと思う。
しかも、全世界でわかりやすい笑いと、玄人好みの笑いのバランスが凄いのだ。
主人公シンが序盤で不良グループに絡まれ、瞬殺するのだが、その中で最後に残るカマキリ拳の使い手が面白い。
あの構えも面白いし、そのあと小銭をせびるのも最高だ。
しかも、最後までチームメイトとしているし、ずっと裸だし、このキャラクターの使い方が絶妙なのだ。
そして、本命はムイ(ヴィッキー・チャオ)であろう。
普段は饅頭屋で働いているが、顔にハエをたからせたり、肩パットを入れたり、丸坊主にしたり、やりたい放題である。
ラストはキーパーとして参加するのだが、相手ゴールと間違え、自分の陣地へ戻る走り方なども笑える。
また、悲しみによって饅頭がしょっぱくなったという情報を得、地面に落ちている饅頭を披露シン。
その饅頭をペロペロなめ、一応安全を確認するのも最高だ。
ラストではシュートの威力が凄すぎて、相手ゴールキーパーの服が破れてしまう(笑)
この様に、笑える要素がかなり散りばめられており、監督のすさまじい才能がヒシヒシと伝わってくるのである。
オフサイドなんて知らなくても楽しめる
そして、最も素晴らしい点はサッカーのルールなんて知らなくても楽しめる点であろう。
オフサイドなんて当然出てこない。
そして、具体的なテクニックなども出てこない。
体の使い方がどうたらこうたら、とか、シュートの時の軸足がどうたらこうたらとか一切無視。
誰でも一瞬で凄さがわかるように、ワイヤーアクションで演出するのだ。
空を走ったり、芝生が剥がれるシュートを撃ったり、お腹にボールをくっつけたり、スポーツをやらない人が見てもそのまんま凄さがわかるように設計されているのだ。
ヒロインであるムイの使い方が絶妙
ラストの試合では、敵はドーピングをしており、魔力的な強さを見せる。
その結果、主人公チームのキーパーはどんどん玉砕されているのであった。
そこで登場するのが主人公シンに想いを寄せる饅頭屋のムイ。
ムイは太極拳で饅頭を作るのだが、少林寺拳法で誰も防げなかった敵のシュートを自在にコントロールするのである。
この「動」と「静」のバランスが素晴らしい。
カンフー映画でツボとなるテーマなのだが、こういった基本しっかり入れてくるところが最高だ。
このラストでムイが敵のシュートを優しくコントールするシーンはなぜか感動してしまう。
こういった、自分でも意味がわからないのに感動してしまうのは監督の手腕なのであろう。
監督・脚本・主演を務めた周星馳(チャウ・シンチー)の才能に脱帽である。
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