※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
『バンテージポイント』は、非常に遊び心のあるサスペンス映画である。
同じ時間に起こる出来事を別の視点で繰り返し見せることで、真実に迫っていく作りとなっている。
例えば、1度目の視点で男女が不倫しているように見えたものが、実はテロの指示を出していたり、人間の持つ先入観を見事に表現している作品だ。
視聴者の先入観を引き出し、それを何度も裏切り続けることで、短い推理小説を何度も読んでいるような満足感を味わうことができる。
犯人や、トリックのどんでん返しではなく、真相がジワジワわかってくる快感に時を忘れてしまうのだ。
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シークレットサービスが弱すぎる
この映画の弱点は、大統領を守るシークレットサービスが弱すぎることだ。
替玉を使って安堵し、油断しているのはわかるが、あれだけの優秀なシークレットサービスが、元特殊部隊でも1人のテロリストにやられるのはさすがにリアリティがない。
これ以外は、犯人がいくら携帯でタイミングよく犯行を行おうが問題ない(笑)
主人公のトーマス・バーンズ(デニス・クエイド)以外、弱すぎるし混乱しすぎているので、この辺から入り込めなくなる人がいる可能性も高いと思われる。
こういった状況でも混乱せずに現状を処理していく訓練を日ごろからつんでいるのではないか?と思ってしまう。
犯人はなぜ女の子をよけたのか?
物語のラスト、途中まで計画通りに進んでいた犯人にも、いよいよほころびがみえはじめる。
爆発で始末したはずのエンリケが生きていたり、バーンズにも追跡されている。
そんな中、逃げる途中で道路に飛び出した女の子を助ける為にハンドルを切って横転してしまう。
ここまで残忍なことをしてきた犯人が、なぜ女の子を助けたのか?
犯人であるスワレスは、ハビエルの弟を始末したり、邪魔になる仲間まで始末する残忍さをしっかり表現している。
だからこそ、女の子の為にハンドルを切ったスワレスに疑問を持つ方も多いと思う。
しかし、こういったテロリスト側の正義も演出することにより、作品に奥行を与えているのである。
この事件は単なる身代金目的ではなく、活動を行う為の武器を引き取る交渉である。
そして、この活動とは正義の為なのである。
つまり、争いというのはお互い正義と思っているものなのである。
よって、もし最後のシーンで女の子を助けなければ、ただのサイコ野郎で浅く終わってしまう。
しかし、助けたこによって犯人の信念も表現され、この一連の犯行に説得力を持たせることに成功しているのである。
フォレスト・ウィテカーがいるだけでホッとする
殺伐とした登場人物が多いなか、フォレスト・ウィテカーの安心感は凄まじい。
わりと初期で女の子との出会いや伏線が展開されるのだが、フォレスト・ウィテカーと絡めば絶対に助かるという安心感が得られる。
根っから暖かい人なのであろう、やはりあの目が優しいのである。
シリアスなシーンが多い中、フォレスト・ウィテカーは非常に丁度よい緊張と緩和をもたらせてくれるのである。
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