※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
まず、この映画を難しくしている点は、末期ガンで死にそうなアール(ジェイソン・ロバーズ)の演出である。
アールはフランク(トムクルーズ)の父であり、リンダ(ジュリアン・ムーア)の夫だ。
そして、看病をするフィル(フィリップ・シーモア・ホフマン)もいる。
下記がアールの基本ブロックだ。
・アール(末期ガン患者)
・フランク(トムクルーズ)
・リンダ(アールの妻)
・フィル(アールの看護士)
そして、上記以外のキャラクターは、クイズ番組の司会者で、やはりガンに苦しむジミー (フィリップ・ベイカー・ホール)。
ジミーの娘でコカイン中毒のクローディア (メロラ・ウォルターズ) 。
そのクローディアに恋をする警官ジム(ジョン・C・ライリー)。
そして、クイズ番組に登場する天才少年スタンリー (ジェレミー・ブラックマン) 。
そして、かつてクイズ番組で活躍した元天才少年だったドニー (ウィリアム・H・メイシー) 。
・ジミー(クイズ番組の司会者)
・クローディア(ジミーの娘)
・ジム(警官)
・スタンリー(天才少年)
・ドニー(元天才少年)
これだけの登場人物がそれぞれのドラマを展開するので、かなりの集中力が必要だ(笑)
さて、冒頭で解説したアールの演出だが、実はそれぞれのドラマはアールが「根っこ」になっているのである。
ここが解り難いのであるが、実はクイズ番組の制作者がアールなのである。
ジミーが倒れ、クイズ番組の放送が終了したとき、スタッフロールにアールの名前があり、実はクイズ番組の制作者だったのである。
ここが本当に解り難いのだ。そして、ここに気づかないと内容がほとんど理解できない作りになっているのである。
つまり、アールこそ全てのキャラクターと繋がっているのだ。
アールがいなければ、ジミーも司会者になってなく、スタンリーも当然出演していない。
元天才少年だったジミーも別の人生となっていたはずだ。
さらにアールが浮気をしなければリンダもいなく、フランクも変なビジネスをしなかったはずである。
この様に、アールがすべての始まりであり、アールの死によって物語も終わるのである。
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カエルの意味は?
『マグノリア』といえばラストのカエルであろう。
カエルが空から大量に降ってくるのである。
このシーンをはじめて観たときは本当に驚いた(笑)
ただ、これは竜巻の影響であり自然科学でも起こり得る現象だ。
その為に、日付や天気を細かくシーンに挿入するのである。
そして、このカエルが空から降ってくるという奇跡のような現象によって、また奇跡的な出来事が起こる。
それがアールの死である。
アールの死とシンクロして大量のカエルが降り注ぐのだ。
そして、そこからはそれぞれのキャラクターが良い方向へ向かっていくのである。
ジムはクローディアに合いにいき、クローディアは初めて笑顔をみせる。
スタンリーは父に「もっとボクを大切にして」と本音を言えるようになる。
ドニーは勤め先の金を盗もうとしたが思いとどまる。
フランクも父と向き合うことができた。
この様に、アールの死の瞬間に大量のカエルが降ってくるという偶然。
その偶然に偶然が重なっていくのである。
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トムクルーズの存在感が凄まじい
今でいう「ナンパ塾」の様なビジネスを展開しているトムクルーズ演じるフランク。
実は、アールの息子であり、本名ではない別名で活動している。
女性にモテるセミナーなどを開催し、成功を収めている。
しかし、そんなフランクに取材が入る。
自信みなぎるフランクは、余裕で取材をこなしていく。
しかし、取材記者がフランクの出生について細かく訪ねていくと表情が一変していく。
あれだけ、自信に満ち溢れていた表情が、みるみる曇っていくのだ。
この演技は本当に素晴らしい。
そして、亡くなりそうなアールに合う場面も凄まじい。
罵詈雑言を浴びせるのだが、次第に罵詈と愛する言葉が混ざっていくのだ。
「クソ野郎!生きろ!」
この複雑な感情を、見事に表現するトムクルーズ。
『マグノリア』は様々な登場人物がそれぞれのストーリーを展開するが、やはりトムクルーズのパートは迫ってくるものがある。
懺悔を洗い流すカエル
この映画は「懺悔」がテーマである。
それぞれの登場人物は「公開」「過ち」「悔い」などを背負っている。
死ぬ間際に懺悔がしたくなる者もいれば、人物と出会うことで懺悔がしたくなる者もいる。
アールや、ジムは浮気を懺悔する。
しかしアールの妻であるリンダも懺悔する。
警官のジムも仕事の失敗を懺悔し、クローディアも懺悔しようとする。
そんな時は、優しく雨が洗い流してくれるものだ。
しかし、この映画ではカエルが重く洗い流してくれるのであった(笑)
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