※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
円都(イェンタウン)という独特の世界観を繰り広げる『スワロウテイル』。
もう20年以上も前の作品である。
未来というより、発展途上の下町的な雰囲気があり、少しダーティな社会が舞台である。
上海からやってきたグリコ(chara)
急に孤児となってしまったアゲハ(伊藤歩)
上海からやってきた円盗ヒオ・フェイホン(三上博史)
この3人が、夢と現実に戦いながら生き抜くストーリーとなっている。
そして、この3人の個性と監督岩井俊二の世界観が一つとなり、他の映画では味わえないような独特の作品に仕上がっている。
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フェイホンが見たイェンタウンバンドの看板
物語の中盤、強制送還を免れたフェイホンは喜びながら道を走る。
もう一度イェンタウンバンドと成功を目指せるからである。
しかし、上をみて何かに気づき考え込むのであった・・・
これが中盤のシーンなのだが、何に気づいたのかラストにならないとわからない「引き」となっている。
ある程度察しがついた方も多いと思うが、イェンタウンバンドの看板に気づいたのだった。
「自分が足を引っ張るのではないか?」そう感じたフェイホンは、あえて憎まれるようにし、バンドから離れていくのである。
すべてはグリコの為に。
しかし、その手切れ金がバンドにバレてしまい(誤解)、バンドは解散することになってしまうのだ。
円都(イェンタウン)はお前達の故郷の名前だろう!
偽札がバレて尋問を受けるフェイホン。
刑事から殴る蹴るの暴力を受けるが、決して口を割らない。
そんな中、刑事から円盗(イェンタウン)と蔑まされる。
この円盗(イェンタウン)とは、この世界において差別的な侮辱キーワードだ。
例えば日本人をジャップというような差別用語である。
それに対して「円都(イェンタウン)はお前達の故郷の名前だろう!」というプライドをみせるフェイホン。
差別に屈しない強い意志と、仲間を裏切らない強い意志を同時に感じさせてくれる最高のシーンだ。
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過去の闇を抜け、アゲハチョウになるアゲハ
娼婦の母親が仕事をしているとき、トイレ(バスルーム)に閉じ込められていたアゲハ。
そんな母を失ってから、大人たちにたらいまわしにされ、グリコに拾われる。
そんなアゲハが唯一大切にしていた場所はグリコが歌うライブハウス。
そのライブハウスを取り戻す為に、偽札を使って大金を集める。
また、過去の呪縛を解き放ち、生きぬく強さを求める姿も感動的である。
グリコ(chara)があっての世界観
この映画の世界観にcharaの歌声は必要不可欠だ。
円都(イェンタウン)という夢も失望もすべて含んだ世界において、charaの歌声の何とも言えない哀愁が心地よい。
また、グリコ自身も大ヒットするのだが、過去を調べられたり、夢を掴んだと思った先に挫折がまっているのだ。
こういった移民の夢をすべて包み込む円都(イェンタウン)にcharaの歌は見事にマッチしているのである。
江口洋介と渡部篤郎も最高
江口洋介が演じるのはリョウリャンキという上海マフィア。
この登場シーンがかっこいい。
中華料理の回転テーブルの上に乗り、武器を持たずに相手を倒していく。(部下が)
そして、忘れてはならないのが渡部篤郎演じるランだ。
偽札で皆が億万長者の夢を見ていた時も、うかれず自分の生活を貫くのである。
そして、後半の戦闘シーンではスナイパーとしての腕を十分披露するのであった。
また、パートナーである山口智子もぶっ飛んでいてかっこいい(笑)
別世界の日本を体験できる映画
この様に、舞台は日本ではあるが別世界の仮想都市を体験できる。
円都(イェンタウン)と円盗(イェンタウン)という絶妙な設定。
そして、魅力的なキャスト。
2時間半と少し長い映画だが、その時間分は別世界にトリップできるであろう。
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