※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

まず驚くべきことは、原作となる小説が20年以上も前の作品であるということだ。
 
東野圭吾は東日本大震災よりもずっと以前に原発についての警笛を鳴らしていた、という前提で観ると感じ方が全然違うはずだ。
 
東日本大震災があって作られたわけではないということだ。
(映画化は少なからず影響があったわけだが)
 
そんな本作品はサスペンスと社会テーマを見事にマッチさせ、そこにアクションエンターテイメント性も加えた渾身の作品だ。
 
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反原発だテーマではない

 
原発がテーマとなっているが、決して反原発をゴリ押している映画ではない。
 
原発が稼働することで起こりえるリスク、そして防ぎようのない矛盾点を鋭く描いている。
 
そして、1番のメッセージは原発と政治の関係性である。
 
この辺だけワザとらしく描いている点が秀逸。
ただし、本質をついていることは間違いない。
 
中途半端な知識で「安全だから問題ない、それより電力の確保こそ国益につながる」と自分のいいように解釈する政治家。
 
そんな政治家が原発による利益を得て、1番危険な目にあうのは国民・県民という不条理さ。
 
これがメインテーマである。
 
「どちらが正しい」という視点ではなく、メリット・デメリットを開示することで原発への関心を国民に持たせることにも成功している。
 
 

ラストまでのスピーディーな展開

 
 また、ラストの主人公と犯人が拳銃を突きつける展開は素晴らしい。
 
その辺の人気だけが取り柄の俳優では出せない迫力がスクリーンからも伝わる。
主人公と犯人のキャスティングもお見事だ。
そして、それを実力者達が援護している。
 
犯人(達)が持つ原発への強い怒り、この動機づけもリアリティがありスムーズに感情移入できる。
 
テーマがテーマなだけに、ヘタなアイドル俳優を出演させないのも作り手の誇りを感じる。
 
 
 社会テーマ、原発問題、いじめ問題などなど、あらゆるテーマが実は関連性があり、深く繋がっているということに気付かせてくれる映画なのである。
 
 
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