※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

フォーン・ブースでは電話ボックスのみで話が展開し仰天したが、この「リミット」は棺桶の中のみで話が終わる。

凄い映画だ。

棺桶の中以外の描写はほぼない。

 

つまり、主人公しか登場しないのである。

 

実はここが一番重要で、棺桶の外(普通の世界)にいる登場人物を『想像させる』ことこそが、この映画の真の狙いなのである。

 

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主人公はイラクで働くアメリカ人。

兵士ではなく、民間会社の社員として働くリスクもあるが、家族のためにより高給を求めて働いているわけだ。

しかし、ある日突然イラク人に拉致されてしまう。

なんと、棺桶に入れられ地中に埋められてしまったのである。

 

つまり、人質誘拐ビジネスである。

 

棺桶の中には携帯電話のみが置いてあり、そこから助けを呼ぶのが主なストーリーだ。

もちろん犯人からも連絡があり、解放の条件などを指示される。

主人公は当然、様々なところに電話をし、助けをもとめる。

家族、会社、国、思いつくところは全て連絡する。

しかし、そこには無常な展開が待ち構えていたのだ。

 

 

リミットの犯人は誰?!

リミットにおいて犯人という設定はどうでもよい。

つまり、「恨み」などの動機ではなく「ビジネス」という点が真の恐怖なのだ。

よって、物語上の犯人の人物像も、それほど丁寧に描かれていない。

これが、どんどん絶望を加速させ引き込まれていく。

 

同情によって助けられるという可能性がゼロ。

ビジネス、つまりお金によってのみ解決の光があるのである。

そして、その光をもとめて主人公が電話一本で糸口を目指すが、どんどん空回りしていくのである。

そして、本当の恐怖は生き埋めにした犯人ではなく、もっとも身近な「人間」や「会社」、「社会」「国」であると気づかされる。

 

顔がわからない恐怖

この映画の素晴らしいところは、観ている側の想像力を極限まで高めてくれるという点であろう。

主人公以外は誰も顔や体がわからないので、自分で想像するしかない。

 

電話相手の顔はどんな感じなのか?

声と、話す内容だけで想像するしかないのである。

 

これは従来の映画とは真逆の発想だ。

 

普通、映画は全てを『具体的』に作る。

色・風景・表情・音など全て具体的にする必要がある。

 

小説は文字だけ。

漫画は白黒。

 

これらを究極まで具体的にしたのが映画なのである。

 

その特徴をいっさい放棄し、観る者の想像力だけで物語を完結させるという離れ業を成し遂げた大作だ。

ずっと生き埋めの状態が続くので、閉所恐怖症の方は辛いかもしれない。

ボクもずっと息苦しさを感じた。

 

そこまでリアリティがあり、酸素のありがたみがわかる、そんな映画なのである(笑)

 

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