※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
本作『ハミングバード』のポスターの中では、ジェイソン・ステイサムの代名詞である「銃」と「車」の描写がある。
しかし、フタを開けてみるとアクションはかなり少ない。というか、ほとんどない。
よって、『トランスポーター』や『アドレナリン』などのアクションを期待すると、肩透かしを食らうかもしれない。
サスペンス的な要素も薄めで、物語としては驚くようなシーンもほとんどない。
しかし!いつものアクション中心のジェイソン・ステイサムとは違う魅力があるから不思議だ。
アクションも普通、サスペンスも普通、意外性も特にない、それでも飽きることなく最後まで目が離せない作品なのである。
家族愛、シスターへの愛、仲の良かったホームレスの娘、などなど、いつもの殺伐としたキャラではなく、なんか今回のステイサムは「暖かい」のだ。
よって、変化球的なジェイソン・ステイサムを本作では堪能できるのである。
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ステイサムのホームレス姿
主人公ジョゼフ・スミス(ジェイソン・ステイサム)は特殊部隊の兵士であった。
ジョゼフはアフガニスタンでの戦争において、目の前で仲間を5人銃撃されたことにショックを受ける。
それにより、報復としてアフガニスタンの民間人を5人始末してしまう。
これは戦闘ストレスにより独断で行ってしまったことであり、軍法違反となってしまう。
ジョゼフの行為は無人偵察機「ハミングバード」によって監視されていたのだ。
そして軍を脱走し、ホームレスとなっていたのである。
このホームレス姿は結構ショッキングだ。
ハゲ+長髪で、無残なステイサムが映し出される。
ただ、ここまでの姿に役作りをしてくれるのが本当に凄い。
日本の俳優だったら、絶対にここまではやらないだろう(笑)
そして、ホームレス生活において、心を許せる相手が同じホームレスの少女イザベルであった。
そんなある日、ホームレス狩りをするギャング2人が襲ってくる。
体力も弱まっているジョゼフは逃げる一方、イザベルはギャングに掴まってしまう。
ジョゼフは何とか逃げ回り、偶然入ったペントハウスが空き家であり、留守番電話の内容からしばらく家主が帰ってこないことを知る。
一時的に忍び込むのではなく、家主が帰る日まで居座るステイサムは、やはりワイルドだ(笑)
その一方、イザベルはギャングに掴まり、風俗に売られてしまうのである。
そして、ある客から暴行され、川へ捨てられてしまうのだ。
その犯人への復讐がメインに展開されていく。
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シスタークリス
ジョゼフがホームレスの時、炊き出しを行っていたシスタークリス。
このシスタークリスとの関わりにより、ジョゼフも少し変わろうとする。
例えば、ジョゼフが中国マフィアにスカウトされて大金を得るようになり、今までのお礼からシスタークリスへお金を渡す。
シスタークリスは最初は躊躇するが、どうしても行きたいバレエコンサートの為にお金を使う。
ただ、受け取った金額分は自分の所持品を売って、綺麗なお金としてジョゼフに返すのである。
こういったことを身近にみてきたジョゼフは、世話になった人にピザをプレゼントしたり、別れた妻に大金を送ったり、人の為にしようと考える。
娘の為に写真を撮るシーンなどは泣けてくる。
また、シスタークリスがなぜお金を使ってまでバレエコンサートに行きたかったのか?
この辺の解明シーンもドラマチックである。
ジョゼフも、シスタークリスもそれぞれ傷があり、また少女でありながらホームレスとなったイザベルにも深い傷があったことは簡単に想像できる。
それぞれ傷を抱えた者が、強き者に支配される状況にジョゼフは嘆くのである。
ラストはバッドエンド?
イザベルを殴った犯人を探しだし、最後もとくにアクションもなく犯人を倒す。
倒すといっても、シンプルにビルから落とす(笑)
ただ、ここまでくると、もうアクションなんてどうでもよくなる。
普通であれば、最後に見応えのあるアクションで締めるのがステイサム映画の定石だ。
しかし、『ハミングバード』は犯人を殴ったり、蹴ったりすることなく、ビルから突き落とし、銃を一発空に撃ち放ち終わりだ。
そして、ジョゼフはまた逃走生活に戻り、ハミングバードに追跡されるのである。
少しバッドエンドっぽい終わり方だが、友達であるホームレス少女の仇を討つという心に染みる作品である。
戦争での復讐と、少女を想う復讐。また、シスタークリスにおいては自分で相手に復讐を果たした。
罪とは一体なにか?を考えさせる作品となっている。
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