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※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

又吉直樹の大ベストセラー小説『火花』の映画版である。

監督は板尾創路で、制作は吉本となっている。

よって、吉本の芸人が多く登場し、作品の臨場感を底上げしている作りとなっている。

主演は菅田将暉と桐谷健太で、この2人が師弟関係(というより親友)になり、お笑いの世界を模索するストーリーである。

「お笑いの世界を模索する」と表現したのは、単純に売れる為に活動していないからである。

この辺がメインとなるコンセプトなのだが、実力と人気の矛盾を追及した形となっている。

よって、結末は結構意外であり、単純なハッピーエンドとはならず興味深い仕上がりだ。

 

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あらすじ

主人公の徳永(菅田将暉)は、相方である山下(川谷修士)とお笑いコンビ「スパークス」という名前で活動をしている。

そんなある日、地方のお祭りの営業で地元のヤンキーに邪魔され、うまくネタをまとめきれずにいた。

そして、次したコンビ「あほんだら」の神谷のヤンキーをうまく利用した臨機応変なネタに感銘を受けるのである。

こうして、徳永は神谷に弟子入りするのであった。

ただ、弟子入りといっても堅苦しいものではなく、ただ飲み歩きながらアドバイスをたまにするという感じに描かれている。

こうして希望に満ち溢れている徳永であるが、実力以上の力も必要なことに気づき、心が揺らいでいくのであった。

 

神谷がそれほど面白く描かれていない

本作で唯一残念なのが、神谷の面白さがうまく表現できていない点であろう。

これは非常に難しい。

ようは、天才肌であり笑いのセンスも抜群な神谷が選ばれず、わかりやすくキャラクターで押すタイプの芸人が売れていくコントラストがこの作品の肝となる。

だからこそ、圧倒的なセンスで視聴者を何度も爆笑させる必要があるのだが、この映画の神谷は残念ながらそれほど面白くない。

こうなると、なぜ徳永が弟子入りしたのか?などの土台が崩れていってしまうのだ。

天才が業界の不条理に遭遇し、自暴自棄となり、最後にまた復活するというのが狙った流れであろう。

しかし、業界の不条理ではなく、単純に面白くないという認識となってしまい、同情が薄くなり、徐々にフェードアウトしてしまうのだ。

 

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食堂でテレビを変えるシーン

本作で一番好きなシーンは、徳永と相方の山下が食堂で飯を食べているときに、テレビのチャンネルを変えてしまうシーンだ。

お昼のバラエティが放映されているのだが、バラエティ独特の視聴者に媚びているわかりやすい笑いに山下が耐え切れなくなってしまうのである。

これは、恐らく「芸人あるある」であろう。

「なんであんな奴が売れてるのか?」

悔しい思いをテレビを見ながらしている芸人はかなり多いと思われる。

このような、日の目をまだ見ていない芸人の心情がよく表現されていると思う。

 

チャレンジしている人はみんな同じ

不安や恐怖に押しつぶされる感覚がよく表現されているが、それはチャレンジが必要な業種なら全部同じだ。

例えば、飲食店を始める人。

自分の出す料理が美味しいのか?美味しくないのか?繁盛するか?などなど不安で押しつぶされるはずである。

しかも、芸人と違い、金銭面のリスクを背負っている。

もちろん、芸人の競争率や独力はわかるが、最近の吉本問題などでも芸人だけが「苦労している」というのは少し違う気がする。

チャレンジするならリスクや努力は必ず必要だし、それはお笑い芸人だけの話ではない。

ただ、この映画を観ることによって、軽い気持ちでお笑い芸人を目指していた人にとっては、素晴らしい教科書になったと思う。

 

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