※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
こんな偶然あるのだろうか?
この『殺人の追憶』を初めて観たのが2019年9月18日。
ボクは何の予備知識も入れないまま映画を観るので、この作品が実話を基にしており、さらに未解決事件という情報は知らなかった。
だからこそ、最後まで緊張感をもって没頭できた。
まさか、未解決で終わるなんて思っていなかったし、それでもラストは鳥肌が立つほど凄い。
もし、未解決事件という予備知識があったら、全然楽しめなかったと思われる。
だからこそ、何もインプットしないまま観れて本当に良かったと思う映画だ。
ただ、やはりモヤモヤは残る・・・
一体誰が犯人だったのか?
しかも、まだ村で生きていると思うとかなりゾッとする。
そんな中『殺人の追憶』を観た数時間後に関連ニュースが入る。
それが容疑者特定である。
こんなことってあるのか?
作品中にもあるが、当時のDNAの鑑定技術では特定できなかったのが、2019年になって正確に鑑定できるようになったのである。
やはり作品の通りパク・ヒョンギュだったのか?
ただ、公訴時効が成立しているので罪には問えないのが残念である。
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目次
当時の臨場感が半端ではない
『殺人の追憶』は華城連続殺人事件(1986~1991)をモチーフにしているフィクションである。
1980年代の韓国の田舎町が赤裸々に描写されていて冒頭から引き込まれていく。
当時の臨場感がよく描かれており、田舎の貧しさなどが鮮明に表現されている。
言葉は悪いが「汚さ」までリアルなのだ。
例えば、物語の途中で仲間の刑事が破傷風で足を切断する。
これは、錆びた釘で刺されたからであり、こういった現代とは異なる不衛生さが見事に描写されているのだ。
また、掘っ立て小屋のような場所が焼肉屋であったり、舗装されていないデコボコの道を耕運機が証拠(足跡)を消しながら移動したり、戦後の荒廃した様子や内戦による精神的なダメージが鮮明に描かれている。
こういった時代背景を細かく緻密に描くことで、まるで事件当時にいるようにさえ錯覚するのである。
そして、そこに多い被さる時代背景。
民主化へ向けてのデモなど情勢は混沌としている。
そんな中、猟奇的な事件が発生するのである。
証拠不十分までの流れ
拷問に近い取り調べ、そして証拠のねつ造など、相当ずさんな捜査をしていた田舎の警察署。
そこへ、ソウル市警のエリート刑事ソ・テユンが捜査に加わるのである。
合理的な捜査によって、徐々に犯人像が浮かび上がるのだが、なかなか真犯人を追いつめることができない。
これまでの事件の分析から、一人の容疑者が浮かびあがる。
綺麗な青年パク・ヒョンギュだ。
パクは、この田舎の労働者に似つかわしくない演出をされている。
物静かで女性的な印象である。
様々なデータからパクが犯人である可能性が非常に高い。
そして、いよいよ証拠となる体液のDNA鑑定が始まるのだが、当時の鑑定技術からか、なんと不一致となってしまう。
これにより事件は迷宮入りとなってしまうのであった。
ラストの顔のアップ
時は流れ、2003年。(※この映画の公開年)
主人公であるパクは刑事をやめセールスマンをしていた。
そして、たまたま通りかかった犯行現場に立ち寄るのである。
当時のように、用水路の中を覗くパク。
昔を懐かしむようなパクの後ろを1人の少女が通りかかる。
そして、不思議なことを言うのであった。
「この前も、この用水路を覗いていた中年男性がいた」
「昔、自分がしたことを懐かしむ為にここに来た」というのであった。
そして、どんな風貌だったかを聞くパク。
すると、少女は「普通の人だった」と答える。
この村のどこかにまだ犯人がいるのである。
そして、ラストはパクの顔のアップで終わる。
その表情はまるで、「犯人よ、お前はこの映画を観てるんだろう?」と言っているようである・・・
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