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※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

人生の指針となるような映画は数少ない。

なんとなく伝わるような映画はあるが、具体的な手法を描くものは皆無だ。

そんな中、ニューシネマパラダイスは観た者の人生を変える程の具体的な演出をしている。

それが、トトが故郷を去るシーンである。

親友であり、師匠であり、父のような存在のアルフレードに半ば強引に独り立ちさせるのである。

故郷というのは当然住み心地がよい。家族もいるし、友達もいる。

しかし、そのような環境が人間の可能性を止めてしまうのも確かである。

まさに茹でガエルの法則である。

ぬるま湯に入っていると気持ちがいいが、気づいたら時すでに遅しという状況になってしまうのだ。

故郷で家族と恋人と生活するのは非常によい心地よいだろう。しかし、そのぬるま湯の状態では大きなことは出来ないのである。

アルフレードは10歳の頃から映写技師として働いている。

無限に広がる外の世界を捨て、映写室に閉じこもり市民に娯楽を提供しているのだ。

それも素晴らしい人生であることは間違いない。

しかし、人生の無限の可能性を子供に教えるのが父の役目ではないか?

アルフレードは心を鬼にして、トトに全てを捨て去らせ「帰ってくるな!」と言う。

アルフレードからしたら、可愛い実子同然であり、目の不自由な自分にとっていつまでもそばにいてほしい存在だ。

それらを全て消し去り、旅立たせるのである。

これは父親以上の存在であり、まさに人生の指針となる教えであろう。

 

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いつ観ても考えさせられる

ボクが本作を初めて観たのが10代の頃だった。

この時は「よし、親の元を離れよう」と思った。

しかし、本気で「目的を成し遂げるまで会わない」というのは難しい。

そこまでの覚悟はどうしてもできなかった。

両親は自営業を営んでおり、ハードな仕事だった為、どうしても置いていくことはできなかったのだ。

ただ、それはただの言い訳だったのかもしれない。

やはり甘えや覚悟が足りなかったのだと思う。

「もしあの時○○していれば・・・」

というのは今でも思う。

ただ、それが不幸せか?というとそうでもない。

愛する人と結婚し、子供にも恵まれた。

トトが恋人と残って結婚していたバージョンである(笑)

ただ、本当にやりたかった事が中途半端になってしまったのは、今になって少し後悔している。

また、自分の子供を考え、アルフレードのように突き放せるか?というのも難しい。

正直、どちらもできない。

この様に、見た時代や置かれている環境によって別物のような輝きを放つ作品でもある。

 

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ラストのキスシーンはもはや伝説

恋人と別れさせ、家族と別れさせ、故郷と別れさせた鬼のようなアルフレード。

もちろんトトを想えばこそだが、やり過ぎではないか?

そんな中、アルフレードの葬儀の途中でアルフレードの奥さんがトトに遺品を渡すのである。

それがフィルムである。

一体どんな映像が記録されているのか?

初めて観た時のドキドキ感はいまでも覚えている。

10代だったボクは「アルフレードがトトに何かビデオメッセージを送るのかな?」と予測していた。

しかし、そのようなものではなく、フィルムには約束が記録されていたのである。

「トトが大人になるまで保管しておく」と約束していたキスシーンのカット集だ。

子供の頃からのアルフレードの思い出、そして父の死をも癒してくれる映画館との思い出。

友情、そして親子を超越した愛情に涙が止まらなくなる。

そして、それを包み込む音楽が反則級の素晴らしさ。

ラストでの感動で本作を越えるものはないであろう・・・

 

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