※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
クエンティン・タランティーノ監督の2作目の作品であり、賞を総なめにした問題作でもある。
今でも熱狂的なファンを生み出す本作は、時系列をずらしたり、名言のオンパレードであったり、映画の表現方法を何段も上げた革命的な作品だ。
短編的な構成となっており、それぞれの話で主人公(中心人物)が登場するスタイルとなっている。
それが最終的に全て繋がるのだが、そこをストレートに繋げず、時系列をずらすあたりのセンスが半端ではない。
レンタルビデオショップで働きながら、大量のインプットをし、脚本や監督のスキルを培ってきたタランティーノ監督。
その大量のインプットと才能が爆発したのが本作『パルプフィクション』なのだ。
とにかく音楽が素晴らしく、台詞が素晴らしく、背景が素晴らしく、バイオレンスが素晴らしく、食べ物がおしゃれなのだ(笑)
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目次
登場したハンバーガー全種類の解説
まず、パルプフィクションで避けては通れないのは「ハンバーガー」だ。
そう、あのファストフードのハンバーガーである(笑)
とにかく様々な種類のハンバーガーが登場し、ハンバーガーを「掴み」に利用するあたりは流石タランティーノ監督である。
登場キャラクターが実際に注文したり、話の中だけ登場したり、始末する相手が食べていたり、ハンバーガーを有効に活用している。
まず最初に登場するハンバーガーは「チーズ・ロワイヤル」。
ビンセント・ベガ(ジョン・トラボルタ)が相棒であるジュールス(サミュエル・L・ジャクソン)にハンバーガーの雑学を力説するのだ。
フランス版クォーターパウンダーなのだが、フランスでは質量の単位が違うのでクォーターパウンダーではなくチーズ・ロワイヤルって言うんだぜ、と熱く語るのである(笑)
そして、ビッグマックのことは「ル・ビッグマック」という、どうでもよい話を冒頭から繰り広げる。
もう、このシーンは何度でも見たくなる(笑)
物語とは何の関係もない話を、この2人が話しているだけで最高にハッピーになれるのだ(笑)
そして、次は2人のボスを裏切ったチンピラの部屋。
チンピラのリーダーは朝食にハンバーガーを食べていたのである。
そのハンバーガーの名前は「ビッグ・カフナ・バーガー」(笑)
いや~凄い。今度はハワイアンバーガーなのだ。
そして、ジュールスはこう言うのである。
「栄養満点の朝飯の代表じゃねえか!」
なんだ、このどうでもいいハンバーガーの特集は?(笑)
冒頭の10分で何種のハンバーガーが出てきたのだ?(笑)
そして、そのチンピラのリーダーが食べかけていたビッグ・カフナ・バーガーを一口食べるジュールス。
美味しいことを伝えた後、ハンバーガーの隣にあったスプライトに気付くのである。
そして「バーガーをこのスプライトで胃に流し込んでいいか?」という名セリフを言うのだ。
なんだこのセリフは!?(笑)
こんなセリフはもう一生聞けない、というほどインパクトがある。
サミュエル・L・ジャクソンの言い方もカッコイイのだが、もうこのシーンは何度観ても鳥肌が立つ(笑)
そして、最後はジャックラビットスリムでミアが注文したハンバーガーである。
その名も「ダーウッド・カービィ・バーガー」。
これを生焼けで注文するのである。
そして、サイドメニューである5ドルのシェイクを一緒に注文するミアであった。
生生焼けのダグラス・サーク・ステーキを注文したビンセントは5ドルのシェイクに興味深々。
ミアに一口もらうのだが、その美味しさに驚くのである。
「なんだこれ!めいゃくちゃ美味いじゃないか!」
こうして、ステーキを5ドルのシェイクで胃に流し込むビンセントであった。
パルプフィクションで登場したハンバーガーまとめ
- チーズ・ロワイヤル
- ル・ビッグマック
- ビッグ・カフナ・バーガー
- ダーウッド・カービィ・バーガー
以上、どうでもいいハンバーガーの雑学である(笑)
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ビンセントとジュールス
パルプフィクションの中心的な人物といえばビンセントとジュールスである。
この2人はギャングのコンビなのだが、明暗が分かれてしまう。
それはボスを裏切ったチンピラを始末した次の瞬間であった。
トイレに隠れていたチンピラの仲間が銃を発砲してきたのだ。
何発も撃たれたのにかすり傷一つないジュールスは、これが神の奇跡だと感じ、ギャングを引退することを決意するのであった。
たまたまだと説得するビンセントであったが、ジュールスの意志は固い。
しかし、この決意によってジュールスは助かり、ビンセントはブッチ(ブルース・ウィリス)に撃たれて死亡してしまう。
ボスを裏切ったブッチを追いかけていたビンセントは、トイレから出てきた所をブッチに撃たれてしまうのだ。
つまり、ジュールスが引退したことによってビンセントは運が尽きてしまったのだ。
トイレとビンセント
ビンセントとトイレの使い方が『パルプフィクション』の魅力の一つでもある。
まず、ミアとのデートの後、いい感じになってしまい、必至に理性を抑えようとするビンセント。
その場所はもちろんトイレである。
トイレの中で、理性と葛藤するのである。
そして、ようやく理性が収まりトイレから出てくるとミアはクスリでぶっ飛んでいたのだ(笑)
そして、次はファミレスである。
パンプキン(ティム・ロス)とハニー・バニー(アマンダ・プラマー)がファミレスを強盗している時、なんとビンセントはトレイに行っているのである(笑)
ただし、ただのチンピラであるパンプキンとジュールスの格の違いによって、ビンセントがいなくても解決してしまうのであった。
そして、最後はブッチのアパートのトイレだ。
本来であればジュールスと来るはずだったブッチのアパート。
そんな中、銃を台所に置きっぱなしでトイレに入ってしまう。
そして父の形見の時計を取りにきたブッチに、あっけなくやられてしまうのである。
もしジュールスが引退してなかったら?そして、その引退した原因というのがトイレに隠れていたチンピラの仲間だったわけである。
このトイレの関連性をうまく使ったクエンティン・タランティーノ監督の非凡さが垣間見えるのである。
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尻の穴に隠した時計
ビンセントがやられるきっかけとなったのが、ブッチが大切にしていた父の形見である時計だ。
マーセルスを裏切り、ボクシングの試合に勝って大金が手に入る予定のブッチ。
急いで逃げるはずだったが、なんと彼女が時計をブッチのアパートに忘れてしまうのである。
ブッチのアパートには当然マーセルスの部下がいるはずだ。
しかし、それを承知で取りに行くほど、父の形見の時計は重要なのだ。
それは、ひいおじいちゃんの代から続く時計であった。
おじいちゃんたちが苦労をしながら世代に渡してきたのであった。
そして、父の手に渡ったとき、第二次世界大戦の中であり、父はベトナムの収容所に捕まってしまったのである。
もし時計がベトナム兵に見つかれば、取り上げらえてしまう。
そこで父は尻の穴に隠して、守り通したのだ。
その期間は、なんと5年間。
しかし、5年間守り通したのだが赤痢で亡くなってしまったのだ。
しかし、その時計を同じ収容所に入れられている友達に託したのである。
そして、その友達も尻の穴に隠して、時計を守りきったのである。
こうして伝わってきた時計は命よりも大切なものなのである。
恐る恐るアパートに戻ったブッチであったが、運よく時計を回収し恋人の元へ戻るのであった。
しかし、その途中でマーセルスにみつかってしまう・・・
覆面男とゼッドの狂気
運悪くマーセルスに見つかってしまったブッチは、機転によりマーセルスを轢こうする。
車は電柱にぶつかり、お互い重傷となっている。
そんな中、ブッチが助かる為に入った店が、まさにカオス。
店の主人は2人を気絶させ、ゼッドという仲間を呼び出すのである。
ゼッドはなんと警察なのだが変態であり、2人を強姦しようとするのだ。
また、見張り役として覆面男というものを呼び出す。
なんとその覆面男というのは、隣の部屋に監禁されている革の覆面をした得たいの知れない人間であった。
別の部屋で、まずはマーセルスから始めるゼッドと店の主人。
そんな中、ブッチは自力で縄をほどき脱出に成功するのであった。
このまま店の外へ逃げるのかと思いきや、なんと店にあった日本刀を使って、マーセルスを助け出すのであった。
怒りに狂ったマーセルスはゼッドを痛めつけながら始末することにし、助けたお礼にブッチを追わない約束をするのであった。
しかし、この変態的なシーンはいつみても狂気である。
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クエンティン・タランティーノ本人も登場
パルプフィクションにはクエンティン・タランティーノ本人も実は登場している。
その役は、ジュールスが車の掃除を行う為にガレージを借りているジミーである。
病院に勤務している妻が帰ってくる前に、なんとかする必要があるビンセントとジュールス。
マーセルスに助けを求めると、ザ・ウルフ(ハーヴェイ・カイテル)を寄こしてくれることになったのだ。
ザ・ウルフは掃除屋として超一流であり、本作で最も威厳があったキャラクターである。
ビンセントのボヤキに対して、自分の威厳を保ちつつかわすやり取りは見どころの一つだ。
意味のないコメディ的なシーンも多いが、こういったギャングの「格」について、しっかり演出している点が素晴らしいのである。
そして、クエンティン・タランティーノ本人が演じるジミーもザ・ウルフに完全にたしなめられ、2人には威勢がよかったのに、ウルフには完全服従してしまうのだ。(何の脅しもしてないのに)
この辺の演出は本当に見事であり、あれだけ箔があるジュールスでさえ、ザ・ウルフには軽くあしらわれてしまうのだ。
これによりギャング映画として見事に引き締まるのである。
まさにタランティーノ・マジックだ。
パルプフィクションの意味は何?
パルプ・フィクションは「くだらない話」という意味となる。
どれくらい、くだなないか?というと、全ての短編が下ネタで繋がっているのである。
そのキーワードが「お尻」や「トイレ」だ。
- ジュールスが引退するきっかけとなったチンピラはトイレに潜んでいた
- ヴィンセントはミアへの理性をトイレで保つ
- ブッチの家宝である時計は尻の穴で守られてきた
- マーセルスはゼッドに尻を掘られてしまう
- トイレから出た所をブッチに撃たれてしまうヴィンセント
- パンプキンとハニー・バニーが強盗している時もトイレにいたヴィンセント
この様に、下品でくだらない出来事がそれぞれの重要な分岐点となるのは計算なのか?まさに天才の構成である。
何度でも観たくなる映画
パルプフィクションは今まで何度も観たが、これからも観てしまうほどの魔力がある。
要素としては、やはり音楽のセンスと、台詞のセンスであろう。
つまり、音声だけでも楽しめる作品なのだ。
もちろんビジュアル面も完璧だが、理屈では説明できない魅力がパルプフィクションには多数詰まっているのである。
本当に才能の塊のような映画なので、まだ観ていない方はぜひ優先的に観ていただきたい。
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