※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。
昔、那須に旅行に行ったときにペーパームーンというペンションに宿泊したことがあった。
その時は映画の『ペーパームーン』の事は知らず、とにかくロビーにたくさん映画ビデオが置いてあったのを記憶している。
なるほど、映画好きなオーナーなのであろう。
自分の城であるペンションの名前を好きな映画のタイトルにするほど憧れるロマンはない。
そして、ダウンタウンの松本人志も本作『ペーパームーン』を著書「シネマ坊主」にて大絶賛している。
この様に、熱狂的なファンを生み出す『ペーパームーン』の魅力は何か?
一言でいうと、押し付けがましくない家族愛だと思う。
本作のメインテーマは家族愛である。
しかし、普通であればこういったテーマの場合、ラストは「お涙ちょうだい」的なものになる。
感動が一気に押し寄せてきて、涙腺が崩壊するようなラストにしたがるものである。
しかし!ペーパームーンは違う!
実に爽やかな感動であり、まったく押し付けがましくないのだ。
そして、子役であるテイタム・オニールの伝説的な演技もラストの見どころだ。
結末の着地点はなんとなく予測できるのであるが、それを上回るテイタム・オニールの演技と演出に唖然としてしまう。
その辺を詳しく、あらすじを交えて解説していきたいと思う。
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目次
あらすじ
以前付き合っていた恋人の葬儀に顔を出す主人公のモーゼ(ライアン・オニール)。
そこには一人娘のアディ(テイタム・オニール)がたたずんでいた。
遠い親戚に引き取られることになるのだが、参列者はモーゼにアディを送るように仕向けるのであった。
そして、母の昔の彼氏(父親かもしれない男)との不思議な旅が始まるのである。
ラストまでモーゼが本当の父かどうかわからず、ヒントもなく淡々と進むのが実に心地よいのだ(笑)
モーゼは詐欺師?
聖書のセールスを行っているモーゼだが、ただ訪問販売をしているわけではない。
亡くなった高齢者をリサーチし、その残された配偶者に対して名前の入った特別な聖書を売りつけるのである。
「生前送る予定であった」ということを聞く配偶者は、愛の深さと勘違いしてしまい高確率で買ってしまうのだ。
このようなビジネス(詐欺)を行っていたモーゼだが、アディと一緒に旅をする中で、時にはアディに助けられる。
アディは訪問先の外観や内装、人物をみて、価格を決めるのである。
そして、それが大当たりしてしまうのだ。
こうして、奇妙なパートナー関係となった2人であった。
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騙されるモーゼを子供の考えで救う
詐欺師であるモーゼは人を騙すプロであるが、意外と自分も騙されやすい。
特に女性にはスグに騙されてしまう。
そんな中、旅の途中でダンサーの女性にそそのかされてしまう。
それを陰ながら心配するアディ。
まるで、ダメな父親の面倒をみる娘そのものである。
そして、アディはもちまえの頭の回転を使って、何とか気付かせることに成功するのだ。
ダンサーの本性に気付いた、モーゼはアディにこういう。
「大人になっても、男を騙すような女にはなるよ」
すると、アディは「うん」と言う。
何か、ここにペーパームーンの良さがすべて詰め込まれていると思う。
本来人を騙す側のモーゼが、説教している人物(娘)に自分が騙されたわけである。
しかも、そもそもアディの母にも騙されているのである。
こういった環境を作ることで、主人公が詐欺師であってもまったく心が離れていかないのである。
ラストのアディは鳥肌ものの演技
本作の魅力は何と言ってもアディ役であるテイタム・オニールの演技力であろう。
この作品でテイタム・オニールは10歳ながらアカデミー助演女優賞を受賞した。
もちろん、当時の最年少記録であり、誰がみても納得するものだと思われる。
母親が亡くなってしまい天涯孤独の身となってしまったアディという役だが、その芯の強さをしっかり表現している。
また、初めて会う父親かもしれない男性(モーゼ)に対して、最初から取引する役というのも凄い。
自分(アディ)のおかげでくすねたモーゼの200ドルを天秤にかけさせるのである。
「200ドル返せ」というセリフや言い方は、流行語大賞並みのパワーがある(笑)
ラストでは安定した生活よりも、父親かもしれない男を選ぶアディ。
この時点で、「どうやって生きていくか?」という心配より、危険でもモーゼと一緒にいたいという感情になっているのだ。
親戚の叔母のうちにアディを置いてきたモーゼだが、アディは追いかけるのである。
はい!この流れは全員が予測できたはずだ(笑)
しかし、そこで感動の安売りをしなかったことで歴史に名を残したのである。
追いかけてきたアディに対して、「お前とは一緒に行かない」と突き放すモーゼ。
親心か?本心か?それはどうでもよい。
そんなモーゼに対して、「200ドル返せよ」と言うアディ。
そして、ブレーキの壊れている車(トラクター)が坂道を走り出すのを2人で追いかけてフィナーレを迎える。
なんだ!この美しさは?(笑)
脚本のセンスと、アディという難易度最高クラスの子役を演じきったテイタム・オニールに拍手を送りたい。
また、父親役のライアン・オニールと娘役のテイタム・オニールは実の親子である。
そして、残念なのが子役の呪いか?その後は悪い大人に振り回され、可哀そうな人生へ進んでしまうのであった。
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