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※この記事には作品の感想(ネタバレ)が書かれておりますのでご注意ください。

目が覚めると巨大な浴室の中・・・

足を鎖に繋がれ、中央には死体・・・

そして、対角線上には同じ状況の男・・・

 

この状況で一体どんな物語が始まるのか?

開始5分で引き込まれてしまうのである。

ポケットの中や、持ち物の中にヒントが紛れており、それが脱出に繋がるものだと思わせる。

しかし、ラストに明かされる衝撃の事実によって、この2人のやりとりは脱出不可能だったことがわかり絶望するのである。

暗闇から始まり、暗闇で終わるという、ホラー映画の基礎を守りつつ、謎解きの要素を入れ、ミステリーを絡めた脚本は見事。

また、予算の関係で俳優を雇えず、脚本を書いたリー・ワネルが、主人公の1人であるアダムを演じたことは有名な話。

しかも、長編映画を撮るのは始めてだったジェームズ・ワン監督。

大学からの親友であるリー・ワネルとジェームズ・ワンが映画会社に売り込んで実現させたデビュー作が「ソウ(SAW)」なのである。

さらに驚くべきことは、なんと撮影期間はたった18日間。

このような状況で歴史に残るソリッドホラーを作り上げたのは、正義超人も驚くほどの2人の友情のなせる技であろう。

 

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ソリッドホラーの代表作へ

基本的に主人公の2人は浴室から外へは出ずに物語は終わる。

浴室の中で謎解きをしながら、回想という流れで話は展開されていくのだ。

まずはケイリー・エルウィス演じるゴードンが、数か月前から起きている事件との関係性に気づく。

猟奇的な殺人事件が最近起こっており、自身も一時期容疑者扱いされていたのだ。

1人目はカミソリの部屋から脱出するゲーム。

2人目は引火性の物質が塗られた中での脱出ゲーム。

3人目は上下の顎が外れる装置からの脱出ゲーム。

そして、3人目のアマンダという女性だけがゲームから生き残ることができたのであった。

この辺から話が面白い方向性へと傾いていく。

それは「死」を実感することで「生」に感謝するというシステムだ。

生き残ったアマンダは、なんと、このシチュエーションを提供してくれた猟奇殺人鬼ジグソウに感謝するのであった。

そして、このコンセプトこそシリーズを支える土台となり、それは宗教や哲学のようなものへと昇華していくのだ。

また、ゲームの難易度が高ければ高いほど、クリアした時の生の喜びが高くなり、さらにジグソウに対して感謝するのである。

完全にカルトである(笑)

しかし、その生存率は限りなく低い為、信者はそれほど多くないのが現状である(笑)

この様に、ホラーの「死」の要素を、ポジティブな「生」に結びつけた点がソウシリーズの人気の秘密であろう。(シリーズを重ねるごとに、このコンセプトは薄れていき最終的にはスプラッター映画となるが・・・)

 

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ミステリー要素と、どんでん返し

ソウシリーズといえば「どんでん返し」。

中でも本作(一作目)は秀逸などんでん返しが楽しめる。

まず、後半から犯人捜しに注意が引かれる。

病院の係員であるゼップ。そして相棒を失い狂気へ走る元刑事のタップ。

この2転3転する展開は見事である。

ラストへ向けて畳み掛けるように、トップギアが入るのが伝わってくる。

妻と娘が危険な目にあっているのを電話の音声から察するゴードン。

この混乱ぶりは、やはり熟練された俳優だからこそだせる演技である。

そして、山場であるゴードンの足切りが始まるのだが、グロいシーンはこの辺だけであろう。

精神的にも追い込まれたゴードンは自分の足を切り、ゲームのルールであるアダムを撃つ。

このラストの混沌ぶりは凄まじい。

そして、撃った後の静寂の後、犯人であるゼップが浴室に現れるのだ。

しかし、なんとなくゼップも妙なのである。

違和感だらけなのだ。

ラスボスっぽくない言動に、意味不明なことを呟いている。

しかし、そんな事おかまいなしで、ゼップに襲い掛かるアダム。

実はゴードンは急所を外して撃っていて致命傷ではなかったのだ。

これにより、犯人をやっつけたか?と思いきや衝撃の展開が待っているのであった。

 

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中央の死体が起き上がる衝撃

自分で足を切ったゴードンは今にも出血多量で危険な状態。

この地下室から外に出られるのか?可能性は限りなく低い。

そんな地下室から出ていくゴードンであったが、アダムはゼップの持ち物をチェックすることに。

鎖の鍵があれば、めでたしめでたしである。

しかし、本作は絶望が待っているのである。

ゼップのポケットからテープレコーダーを探し出したアダム。

それを再生すると、ゼップもまた、真犯人にゲームを仕掛けられていたことを知るのであった。

この衝撃の事実を唖然としながら聞くアダム。

では、犯人は一体誰だったのか?

そんな考えを巡らした瞬間、アダムの背景を何か動き出すのである。

なんと中央の死体が起き上がり出したのだ。

そして、それが真犯人である猟奇殺人鬼ジグソウことジョン・クレイマー(トビン・ベル)。

ゴードンの病院で一度だけ登場した人物である。

「ジグソウは最前列でみるのが好き」という警察官のセリフが頭をよぎる。

つまり、ジグソウは2人のやりとりを最も近い場所で見ていたのだ。

そして、立ち上がったジグソウはアダムに鎖の鍵のありかを教える。

なんと鎖の鍵は冒頭でアダムが入っていた浴槽の中にあったとのこと。

浴槽の水を抜かなければ溺死しており、水を抜けば鍵は排水溝へ流れる・・・

つまり、どちらにせよ助からなかったのである。

ゆっくりと起き上がり、浴室の重いをドアを閉めるジグソウ。

暗闇の中で、アダムの叫び声がこだまするのであった・・・

ホラー映画としては満点のラストであろう。

この奇跡のアイディアをしっかりと形にしたリー・ワネルとジェームズ・ワンの努力に拍手を送りたい。

 

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